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[特集] 町並みとともにこれまでも、これからも(1)

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長野県須坂市

◆町並みとともにこれまでも、これからも
須坂の町並みが重要伝統的建造物群保存地区に選定されます

30年以上前に始まった須坂市の町並み保存活動。このたび須坂市の伝統的な町並みが、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定される予定となりました。
今月号では、伝統的建造物群保存地区制度と保存地区の概要、町並み保存に関するこれまでの経緯などを紹介します。

■歴史的な町並みを保存する「伝統的建造物群保存地区制度」
何代にもわたり受け継がれてきた集落・町並みなどの伝統的な建物群は、地域の歴史を語る貴重な文化遺産であり、後世に伝えるべきもの。こうした考えに基づき、「伝統的建造物群保存地区制度(以下、伝建制度)」は生まれました。「
伝統的建造物群保存地区(以下、伝建地区)」は、伝統的な建築物および工作物(以下、特定物件)とその周辺環境を、将来にわたって保存すると市区町村が定めた地区で、条例や計画に基づき保存のための事業が行われます。
また、伝建地区のうち、国にとって価値が高いとされる地区は「重要伝統的建造物群保存地区(以下、重伝建地区)」に選定され、国や都道府県も、保存のためのさまざまな支援を行います。1975年(昭和50年)の制度開始からこれまで、全国で105市町村127地区、県内では6市町村7地区が重伝建地区に選定されています。

▽県内重要伝統的建造物群保存地区一覧

■保存地区の概要
◇北信地方の製糸業の隆盛を伝える豪壮な主屋が建ち並ぶ近代の商家町
名称:須坂市須坂伝統的建造物群保存地区(以下、保存地区)
種別:製糸町・商家町
範囲:中町交差点を中心とする約18・3ヘクタール
保存地区は、近世から十字に交わる街道に沿って町場が形成されており、近代以降の製糸業の隆盛とともに商業地として栄えました。製糸家の店舗や住居として建てられた豪壮な土蔵造(づくり)(柱や梁(はり)を壁で覆い、表から見えないように仕上げ、屋根は瓦葺(ぶ)きとする造り)の町並みを中心に、繭蔵として建てられた土蔵や、町場の拡大に伴い建てられた長屋群など、多様な町並みが形成されています。

◇保存地区の範囲と特定物件の位置図
※詳しくは本紙をご覧ください。

詳細は、市ホームページをご覧ください。

■魅力豊かな町並み
保存地区の町並みは「蔵の町」と呼ばれるように、屋根が瓦葺きで土壁の建築物が特徴的ですが、外壁の仕上げ、屋根形状、軒周りのデザインなどにそれぞれ違いがあり、それらの個性が町並みの大きな魅力となっています。
また、建築物以外にも、店舗と店舗の間に設けられた「脇門」、建物の基礎に設けられた「ぼたもち石積み」など、保存地区ならではの特徴が数多く見られます。

■知っているとちょっと楽しい♪建物用語解説
▽妻入・平入…切妻造(2方向に傾斜がある三角形の屋根形状)で、屋根の三角形を表に向けるものが妻入、三角形を横に向けるものが平入。

▽脇門…店舗は表の街道から入るが、店舗の後ろにある主屋へは店舗の横に設けられた脇門から外通路を通り、玄関に入る。須坂の町並みの特徴の一つ。

▽ぼたもち石積み…丸々とした大きな石を積んだもの。石一つ積むのに1日かかると言われるほど、石工の技術と時間を要するものだった。

■Interview
・土本 俊和さん
信州大学工学部 教授
須坂市伝建保存審議会 会長
◇須坂の町並みの魅力は
1988年、大学生で須坂の最初の調査に参加しました。当時、「京都の町家と同じで、奥に深い」と思ったことを覚えていますが、この「奥」は須坂の魅力の一つといえます。
須坂の街道沿いの屋敷地では、表に面して土蔵造の建物が建ち、ここで店が営まれます。一方、店の横の脇門を入った奥には、表とは装いの異なる住居部分が存在します。これらの表と裏は密接に結びついて家全体を形成し、また、一体となって須坂の町並みを構成しています。
町並みを見る際は、あてなく歩き回って先入観なく観察してみることがおすすめです。せっかく須坂の町並みが広く評価されたので、どこが良いのか、悪いところも含めてしっかりと見つめて、「これが須坂」と感じられるものを見つけていくといいと思います。

・小林 義則さん
須坂景観づくりの会 理事長
須坂市伝建保存審議会 副会長
◇思いをつなぐ役割を期待
須坂の町並み保存活動のきっかけとなり主体となったのは、1986年に地元有志で結成された「信州須坂町並み保存の会」。後で知りましたが、私の父も会のメンバーでした。家業は立町の居酒屋ですが、私が小学生の頃は、町並みを巡るイベントのために昼営業をしていた記憶があります。そんな頃からずっと勉強会やイベントが開催されてきました。
重伝建地区選定は、こうした親の世代、さらに前の先人たちによって残されてきた建物や町並みを、次の世代に受け継いでいく手段です。建物の修理に国などから補助があることは大きな点ですが、「地域にとって大切なもの」という思いを共有し、つないでいくために役立つことを期待しています。地域の人が町の見所を知っていて、案内できるような町になったらすてきですよね。

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