さまざまな人が暮らす私たちのまち。その中には障がいがある人もいます。高森町では障がいの有無や性別、年齢を問わず、全ての人がお互いの価値観や個性を受け入れて尊重し合う「共生社会」の実現を目指しています。
例えば、障がいとひとことで言ってもその特性や困難さは異なります。サポートが必要な場合もあれば、何もしないことがその人のためになる場合もあります。また、支える側、受ける側に分かれて一方的に助けてほしいというわけではなく、自身の個性や技術を生かして職場や地域活動に参加するなど「社会を支える存在でありたい」と願っている人たちもいます。
普段、私たちが目が悪いとメガネをかけたり、お年寄りに大きな声でゆっくり話したりするように、不自由さを補う道具や支援があれば、障がいのある人にもできることはたくさんあります。まずは障がいの特性や、障がいのある人について正しく理解し、適切な対応やサポートをすることが、あたたかな地域社会を築くための一歩になるのです。
「共に生きる」「共に働く」を当たり前に。全ての人が助け合い、共に生きる社会を目指して、まずは知ることから始めてみませんか。
■助けられ、時には助けるそんな相互関係こそが本当の「共生」
社会福祉法人 親愛の里 紙ふうせん
所長 伊藤理恵さん
高森町山吹にある親愛の里紙ふうせん。就労継続B型事業所※1として、障がいのある方に働く場所や機会を提供しています。同所の取り組みについて所長の伊藤理恵さんに聞きました。
―利用者はどんな仕事をしていますか。
主に農業と軽作業を行っています。農業は、養命酒製造株式会社と契約して薬草の栽培を担っているほか、大根、市田柿などの栽培・出荷も行います。軽作業は、事業所内での受託作業と、依頼先へ出向いての施設外就労があります。紙ふうせんでは、利用者の思いや目指したい姿に寄り添った作業と活動を大切にしています。また仕事だけでなく、仲間とのコミュニケーションや地域との関わりなど社会生活力の向上も目指しています。
―仕事以外にはどんな活動がありますか。
年に数回、お花見や食事会などの行事があります。また希望者はイベントの企画を行う「福利厚生班」や所内の環境整備を行う「生活班」などの班活動にも参加していますね。社会との関わりという面では、施設から近隣の駅までのゴミ拾い活動などにも、定期的に取り組んでいます。
―施設外就労も積極的に受けているそうですね。
はい。高森町役場や企業など、依頼者の希望に合わせて現場へ出向き、作業をしています。現場でやりやすい作業ということもありますが、仕事の現場を見たり、人と交わることも一つの経験になると考えています。
ー具体的にどんな仕事をしていますか。
たとえば高森町役場では、広報や通知などの文書の仕分け、数を数える作業をしています。また、JAの営農センターでは全国発送するリンゴや梨などの果実や市田柿の箱詰めを担っています。地元でお手伝いできる仕事をいただけて助かっています。
ー利用者が「輝いてるな」と感じるのはどんな時ですか。
皆さんそれぞれに個性や強みがあり、一人一人に魅力があります。そうした部分をうまく発揮できている姿が見られた時はうれしいですし、やりがいを感じますね。私たち職員のモチベーションにもなっています。
ー利用者が生活をする中で、町の皆さんにこんな風に見守って欲しい、接して欲しいという点はありますか。
すれ違ったらあいさつを交わすなど同じ町に住む一人の住民として自然に触れ合ってもらえたらそれが一番だと思います。もちろん支えていただかなくてはいけない部分もありますが、お話しした施設外就労やごみ拾いなど、私たち自身もできることをチャンスとして掴んで、社会に溶け込んでいきたいと考えています。
たとえばイベントなどの際、お客さんとして呼んでいただくのもありがたいですが、スタッフや裏方として関わることができればもっとうれしい。どちらか一方が助けるだけではなく、助けられ、助ける、そんな相互関係を築けることこそ本当の意味での「共生」だと思いますし、高森町がそんなまちになればいいなと願っています。
※1 雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、就労の機会の提供および生産活動の機会の提供を行う施設。
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