人口減少と高齢化が急速に進行するなか、「地域医療」の取組が重要視されています。「地域医療」とは、病院などでの治療やケアにとどまらず、医療機関の機能の分化や連携を進めながら地域全体で住民の健康をサポートする医療体制のことを指します。
むつ総合病院は下北圏域における地域医療の核となる病院ですが、運営面での課題のほか、「待ち時間が長い」「先生や看護師が足りていない」といった不安を抱いている方が多い現状です。また、より高度な医療を求めて圏域外に通院している患者さんも多くいます。
こうした中、10月11日に下北医療センターは弘前大学の協力を得て、情報通信技術を活用したオンライン診療と遠隔診療支援に取り組んでいくことを発表しました。これらは地域医療を前進させる県内初の試みとして注目を集めています。
今回の特集では、むつ総合病院が担うこれからの地域医療に関わる取組を紹介します。
■弘前大学医学部附属病院とむつ総合病院が連携 オンライン診療と遠隔診療支援で地域医療が変わる
むつ総合病院
院長 松浦 修(まつうら おさむ)
オンライン診療の仕組みを下北地域全体に波及できれば、病状が安定している患者さんであれば遠方の病院まで通院せずに近くの診療所でオンラインで診察ができるようになります。
また遠隔診療支援においては、将来的には手術ロボットを用いた遠隔手術が可能になるのではないかと期待しています。
少子高齢化のさらなる進行、医療人材不足への対応が急務となっている中、今回のオンライン診療や遠隔診療支援をはじめとした医療DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めていくことは非常に大きな意味があります。先駆けとなる取組を下北地域で進めることで、患者さんと医療従事者の負担を軽減し、より良い医療を提供できることを目指しています。
これが地方医療のモデルケースになれば、地域全体にとって大きな意義があると考えています。
■オンライン診療
オンライン診療とは、インターネット上でむつ総合病院と弘前大学医学部附属病院をつなぎ、パソコンやタブレットの画面越しに弘前大学医学部附属病院の医師に診察や薬の処方をしてもらう診療方法です。
◇現在
例)毎月、弘前大学医学部附属病院へ通院…直接医師から診察や薬の処方を受けます。
◇導入後
むつ総合病院+弘前大学医学部附属病院
例)弘前大学医学部附属病院への通院が2ヶ月に1度になります…オンライン診療を選択することで、通院のための交通費や宿泊費用の負担軽減につながります。
■遠隔診療支援
遠隔診療支援とは、むつ総合病院の医師がインターネット上で弘前大学医学部附属病院の医師の支援を受けながら診療をする方法です。これによって、患者さんはむつ総合病院でより高度で専門的な診療を受けることが可能になります。
◇遠隔脳神経外科手術支援
脳神経外科手術の際、弘前大学医学部附属病院とリアルタイムで手術映像を共有し、助言をもらいながら手術を行なうことができるようになります。
◇遠隔妊産婦管理
弘前大学医学部附属病院の周産期専門医とリアルタイムでエコー画像を共有することで、妊産婦健診時の超音波検査で胎児異常が疑わしい場合でも迅速な診断が可能になります。
◇遠隔画像診断
むつ総合病院で撮影したCTやMRI画像の読影(どくえい)を弘前大学医学部附属病院の画像診断医に依頼することで、迅速な診断が可能になります。
◇遠隔ICU(集中治療室)による重症患者管理
弘前大学医学部附属病院の集中治療専門医の支援により、休日、夜間時における患者急変時に、より迅速な処置が可能になります。
◇負担の軽減だけではなく、安心して受診してもらうために
これまで妊産婦さんの超音波検査で異常が疑われた場合、2時間から3 時間かけて市外までの長い距離を移動していました。遠隔診療支援により妊産婦さんの身体的な負担や金銭面の負担が減り、専門性の高い周産期の診察を受けられるようになります。
婦人科
部長 武田 愛紗(たけだ あいさ)
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