現在、平川市では、人口減少や少子高齢化の問題を抱えています。市の基幹産業である農業については、水稲やりんご農家の数が年々減少しており、担い手不足の状況が続いています。尾上地域の庭園文化を継承する庭師についても、後継者不足に悩まされています。郷土芸能「獅子踊」では、後継者不足により団体数が減り、市民が地域の伝統に触れる機会が少なくなっています。また、県内屈指の温泉のまちである当市の温泉施設についても減少傾向にあり、長期的にみると地域の温泉文化の存続が危ぶまれている状況です。冬季には一人で雪を片付けることが難しい高齢者を対象に地域でのボランティア除雪も必要となっています。
今回は、このような状況下においても、産業や郷土芸能、文化や地域を守る活動について、それぞれの分野で継承しようと活動する皆さんをご紹介します。
■りんご農家
株式会社那由多のりんご園 三浦那由多(なゆた)さん(27歳・沖館)
▽那由多のりんご園
柏木農業高校(環境工学科)を卒業し、尾崎りんごセンター(弘前市)で1年間修行した後、りんご農家として働いて10年以上という三浦さん。りんご栽培は祖父の代から始まっているといいます。「平成28年に那由多のりんご園を設立し、現在は、父と祖父と祖母の4人にスタッフ数人で運営しています。私の『那由多』という名前は数字の単位で、きわめて大きな数量を表しており、父親がりんご園を設立した時に名称に入れました」
▽ずっと身近にあったりんご
「実家がりんご農家だったので、小さい頃からりんごが身近にあり、りんごを食べることが大好きでした。小学校高学年くらいから、葉取りや反射シート敷きなどの簡単な作業は手伝うようになりました。高校時代には収穫シーズンになるとりんごもぎの作業を本格的に手伝っていました。高校も農業専門校を選んだということもあり、どこか祖父の代から続くこのりんご農家の後を継ぐことを考えていたんだと思います」と三浦さんは話します。
▽りんご作りのこだわり
お客様に満足してもらえるよう、品質の良いりんご作りを意識しているという三浦さん。「化学肥料や除草剤は不使用、有機肥料100%で生産しています。りんご1つ1つを糖度センサーに通し、基準をクリアした果実のみを出荷していて、贈答用の場合はりんご1個ずつ(贈答用でない場合は1箱に1個)に糖度を表示した紙を付けて、甘さを目で見えるようにしています。りんごの4面の糖度を測定して糖度を出す作業なので手間がかかるのですが、甘さが十分であることを保証できるうえ、それぞれのりんごを食べ比べるなどして楽しんでもらいたいという思いがあります」と話します。
▽自分のように農業を
まずは売上と顧客の獲得に力を入れていきたいという三浦さん。「青森県のりんごと言えばうちのりんご、と言ってもらえるよう、日々精進したい」と希望を語ります。「年齢や健康を理由にりんご栽培をやめる人も少なくないので、自分のように農業を選択する人が増えていけば、さらにりんご産業が盛り上がっていくと思います」と話しました。
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