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自治体の皆さまへ

“改革への挑戦” 新春対談 2024(2)

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静岡県 伊東市

■ロケツーリズムの魅力

《市長》
藤崎さんは伊東市だけでなく、さまざまな形で地方自治体と関わってきたと思います。その経験の中で、ロケツーリズムの魅力について、ご教授いただけますでしょうか。

《藤崎》
ロケツーリズムの魅力は大きく3つあると考えています。

一つ目は市民や企業の参加がしやすい点です。映画やドラマでは、一般の人がエキストラとして参加することができます。やる前は恥ずかしいかもしれませんが、いざやってみると思った以上に楽しく自分のまち以外のロケにもエキストラ参加するほどのめりこむ人も多いです。また、私が関わっている地域では市長や議員がエキストラとして参加したケースもあります。このように、性別や年齢、職業に関係なく参加しやすい点はロケツーリズムのメリットです。伊東ロケーションサービスでもエキストラの募集は随時行い、市民参加の機会をできる限り多く持つことは事業の浸透にも重要だと思います。

加えて、経済効果という点で企業参加のハードルが低いことも大きなメリットです。例えば、令和4年度に伊東市で撮影されたドラマ『金田一少年の事件簿』ではロケセットの設営に地元の企業が協力し、1500万円近い経済効果が生まれています。最近ではフジテレビの月9ドラマ『真夏のシンデレラ』が伊東マリンタウンで撮影されました。お祭りのシーンでは、映っている出店の屋台は市内の事業者が有償で協力したと聞いています。まちづくりには民間事業者の協力が不可欠ですので、参加することで直接的な利益が生まれることは大きな利点です。

二つ目は目に見える効果が多い点です。特に情報番組に多いのですが、この種の番組は施設の名前や商品をそのまま紹介します。映画やドラマの場合、架空の地名でロケ地になることが多く「聖地」として人が訪れるのに時間差がある場合もありますが、情報番組では放送直後に人が訪れたり物が売れたりすることがよくあります。実際、『ヒルナンデス!』で小室山が紹介された週末にはリフトを待つ大行列ができました。今では番組の配信が増え、後から見返すことも簡単ですので、潜在的な効果は実際に見えているもの以上かもしれません。

最後の一つは多種多様な層に情報発信できる点です。国内のロケツーリズムといえば大河ドラマと朝ドラが毎年話題になりますが、一つの作品でPRできる層には限界があります。作品のファンがいれば、出演者や監督のファンもいて、全員が同じものを観るわけではありません。最近ではNetflixやAmazon Primeなどのプラットフォームで世界配信される作品も増えており、インバウンド誘客にも大きな期待ができます。山梨県と静岡県がロケ地となった『ゆるキャン△』のアニメは世界的に人気で、市内にも多くのインバウンドが訪れていると聞いています。ロケツーリズムは単独の作品に依存することなく、継続的にロケを呼び込み、できる限り多くの人に伊東を知ってもらい、実際に訪れ、物を買うきっかけを作ることを目指しています。

《市長》
ロケツーリズムを成功させるためには、行政、地元企業、地域住民が連携して取り組むことが重要だということがとても良く分かりました。

■伊東市のロケツーリズムのポテンシャル

《市長》
伊東ロケーションサービスも着実に実績を残していますが、さらなる飛躍のために今後の課題などはありますでしょうか。また、ロケツーリズムの専門家から見たときに、伊東市はどのような市であるか教えてください。他自治体と比較してポテンシャルはあるのでしょうか。

《藤崎》
伊東市はロケツーリズムととても相性がいいです。我々が運営しているロケツーリズム協議会では、セミナーとワーキング、映像制作者と直接ロケ地の交渉を行うマッチング大会を開催していますが、その中で伊東市の取組は群を抜いています。成果が上がっている理由としては、先ほども話したロケ誘致の体制が大きいと思います。

まずは伊東ロケーションサービス。ロケは撮影する側、受け入れる側それぞれがチームプレーです。一般的には監督が目立ちますが、製作資金を集めるプロデューサーから快適な撮影環境づくりを担う制作部や美術部など、多くの人がそれぞれの役割の下でロケに取り組んでいます。これは受け入れる側も同様で、現場対応の担当者一人が頑張るのではなく、まちぐるみでロケをサポートすることが不可欠です。残念なことに行政の担当者一人がロケ対応に追われ、地域の魅力を活かすことができないケースは非常に多いです。私の印象に残っているのは、アメリカで開催された国際フィルム・コミッション協会に行ったときに会った、自治体の職員です。彼は鉢巻きをして必死に制作者へビラを配っていました。話を聞くと、「市長からハリウッド映画を誘致するよう指示を受けた。」と言っていました。これではあまりにかわいそうです。伊東市は担当者一人でロケ対応するのではなく、シティプロモーションの一環として組織的に対応しており、それが成果につながっていると思います。

また、組織的な対応といえば、官民一体のロケ支援組織「伊東ロケーションサービス」の実行部隊である伊東ロケこらっシェルジュの存在も非常に大きいです。このチームは市役所の職員と民間企業の有志で組織されロケのサポートを目的としています。行政と民間それぞれの強みを活かしたロケ対応をすることで、偏りのないバランスが取れたPRができることは他の自治体にはない強みといえます。

また、東京からのアクセスの良さも強みです。制作会社の多くは東京と大阪に集中しています。東京から車、電車ともに比較的近い伊東市は撮影隊からするとロケ地にしやすいですし、観光地として紹介するスポットが多いことも恵まれた点です。総合的に見て、伊東市はロケに適したまちだと思います。

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