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新春知事インタビュー 富国有徳の「美しい“ふじのくに”」づくり 1

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静岡県

~東京時代から静岡時代へ~
令和6年の幕開けにあたり、今年の県政のビジョンや抱負などについて、元静岡新聞社論説委員長でSBSプロモーション常務取締役の中島忠男さんが聞きました。

・静岡県知事 川勝 平太
・SBSプロモーション常務取締役 中島 忠男
静岡新聞社政治部記者として川勝知事の初当選当時から県政を取材。同社政治部長、論説委員長などを経て昨年6月より現職

■東アジア文化都市で「日本の代表」として魅力を発信
(中島):昨年は不安定な国際情勢による世界的な物価高騰、記録的な猛暑や大雨に見舞われた一年でした。一方、静岡県では富士山世界文化遺産登録10周年の記念すべき年に、東アジア文化都市として一年を通して県内各地で文化活動が開催されました。アフターコロナ時代の幕開けにふさわしい一年だったのではないでしょうか。

(知事):本県は昨年、他の地域と同様、台風、猛暑、豪雨、物価高騰などで打撃を受けました。そのような中、静岡県が政府から日本の「文化首都」に選ばれました。それを主体的に受けとめて、食・スポーツ・文化・芸術・芸能など、多種多様な文化イベントを展開し、約1000の事業件数、約880万人の参加者があり、大成功でした。文化は人々の情操を養い、地域社会を平和にする力があります。本県の成功を受け、文部科学大臣は「レガシー創出も含めた本事業のさらなる充実に努める」と、昨年11月の官邸での全国知事会で明言されました。県民各位のご協力に改めて感謝をささげます。今年は、本県の文化に磨きをかけ、世界に誇るSDGsの先進県として、また平和な地域としてのモデル県にしたいと思っています。

■和食を通じ「ガストロノミーツーリズム」を推進
(中島):アフターコロナを迎え、インバウンドは回復傾向にあります。和食は世界的に人気となっていることに加え、本県は今年富士山静岡空港も開港15周年を迎える他、3月からは20周年の節目を迎える「浜名湖花博2024」が始まります。「東アジア文化都市2023静岡県」で再認した本県の魅力をどのように発信し、交流拡大へとつなげていかれますか。

(知事):和食のユネスコ無形文化遺産への登録が追い風になりました。海外で和食店が増えています。令和5年の和食の海外店舗数は18万7000店で、令和3年の約15万9000店から約2割増えました。ヨーロッパでは約1万6200店、北米では約2万8600店、アフリカや中東にも登場しています※。和食は、盛り皿を含め目で楽しみ、季節を味わい、おいしくバランスの取れた食文化です。旬の食材を大事にするのは、常に若返る「常若(とこわか)」を尊ぶ日本の文化に由来しています。和食の基本形は一汁三菜と言われます。「一は二を生じ、二は三を生じ、三は万物を生ずる」という古典の言葉のとおり、三菜とは多菜のことです。本県は日本一多彩な食材に恵まれており、和食だけでなく、外国人の県民も多く、国際色豊かで多彩な食文化を楽しめます。「浜名湖花博2024」は、デジタル実装を取り込みながら、花も実(食文化)も楽しめるものにします。
※農林水産省輸出・国際局「海外における日本食レストランの概数」より

(中島):和食は日本の文化であるとともに、人と人をつなぎ平和を導く「和の食」でもある気がします。教育や観光とも一層結び付きを深めれば、本県の魅力を発信する格好の素材だと思います。

(知事):「ガストロノミー」とは食文化のことですが、食文化を観光と結びつけるガストロノミーツーリズムを積極的に推進しています。本県は食材にも観光資源にも恵まれています。楽しい旅とおいしい食事は人を幸せにしますから、食材生産者、料理人、食の研究者、観光業者などと連携し、魅力的な食文化と景色をPRし、来静者に「訪れてよし」の感動体験を提供し、「和の食の都づくり」を目指します。

■デジタル化が可能にする多様なライフスタイル
(中島):静岡県は若年層の県外転出を主因として人口減の傾向にあるものの、子育て世代や高齢者層の転入は増加しています。本県に関心を持っていただいた人たちの移住の決断を後押しするには、住まいや仕事、教育、コミュニティーなどをサポートする総合的な施策が不可欠です。新年にあたり、人口増加策への決意をお願いできますか。

(知事):「30歳になったら静岡県!」に取り組んだ結果、3年連続で過去最高を更新し、2020年に約1400人が移住、そのうち81%以上が30代前後、2022年には2600人台に大幅に増加し、そのうちの83%以上が30代前後の世代でした。子育て世代が静岡県に移住してきています。

(中島):子育て世代に選ばれる県なのですね。

(知事):Uターン、Iターンなどさまざまですが、子育て世代をターゲットに「住んでよし」をPRしています。例えば、遠回りのようですが、数年前から県内高校生の卒業時に「ふじのくにパスポート」のカードを配布しています。県を出た若い世代がカードから常に静岡の情報にアクセスできる仕組みです。その他、県外の諸大学との就職支援協定、空き家の活用、リフォーム支援など、市町や地域団体などと連携しながら、本県の魅力である「住んでよし、働いてよし」を発信しています。

(中島):デジタル化によってリモートワークなども可能になり、働き方も多様化してきましたね。

(知事):農繁期と農閑期のある農業では農閑期に副業でワラを編んだり工芸品を作ったりするのが当たり前で、副業・兼業という表現が適切かどうか分かりませんが、多くの職種でフレキシブルに時間が使える時代になりましたので、副業・兼業が増えてもいいと思います。オンラインで仕事をし、気分転換に農作業をする人がいてもいい。デジタル化のおかげで働き方の選択肢が増えています。

(中島):最近は「半農半漁」から転じた「半農半X」の働き方が広がっています。兼業部分のXは、例えば創作の仕事やNPO活動でもいい。地域おこしの起業は大歓迎でしょう。刺激を受けた住民が地域の良さを再認識する契機にもなります。

(知事):世の中には社会に役立つ才覚を持つ人がいます。各人の才覚が生かせるように兼業を認める企業が増えればいいですね。その一助として、若者のUIターン就職支援、女性・外国人支援など、県内企業への就職、起業、テレワークといった多様な働き方ができる環境の整備を行っています。働き方の改革は生活スタイルの一新でもあります。衣食住の生活スタイルのうち、「食」は心身を健康にする消費です。「衣」の消費は自己表現です。最大の消費は「住」です。家が広くなると、誰もうれしい。住まいが広くなると、耐久消費材への個人消費がおのずから増えます。個人消費が増えると、生産が活性化します。コロナ禍で、東京一極集中の「密」のため、都民の感染者数は全国最高でした。本県は、密のない環境に恵まれ、豊かな食材だけでなく、ゆとりある暮らし空間を持てるという強みがあります。その強みを最大限に生かして「東京時代から静岡時代へ」を加速させます。

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