■これからとこれまで
○基準の統一化を目指し技術・知識の共有
JA大井川では「みかん寺子屋」を開催し、農家へのアドバイスを行っています。病気に関する資料をまとめて配布するなど、助言を行っています。また「神座みかんを育てる会」は毎月会合を開き、情報共有を図っています。地域の思いに協力し、関情報共有する「神座みかんを育てる会」のメンバーたちとJA職員係団体とさらに連携するようになりました。
○実は出荷されないみかんも多い!?
極早生など日持ちしない品種は、早めに収穫しなければいけません。また、台風や猛暑、害虫などによって傷んだものは、出荷されずに捨てられるなど、知られていない苦悩があります。
▼農業の未来は明るい
北川森(きたがわしん)さん
○就農して感じた地元の良さ
就農して約10年。昨年、父から経営を継承しました。始めのうちは経験も浅く、苦労しかありませんでした。しかし、周りの農家が顔見知りということもあり、いろいろ教えてくれました。今では逆に聞かれることもあり、お互いに良いコミュニケーションが取れていると思います。神座地区は、農業に取り組みやすいと感じています。
○神座みかんの在るべき姿
歴史あるみかんの産地として、今後も守っていかなければいけないと考えています。受け継いできた魅力をより高めていく必要があります。それぞれの農家で異なる良さがあるので、技術や知識の共有をしてお互いに高め合っていくことが大切だと思います。より良いものを作ろうとする意識が、産地として生き残れるか重要になります。また一つ一つの農家が、知識や技術を身に付け、強くなってほしいです。
神座では、無人販売や直接買いに来るお客さんが中心です。対面で売ることで、生の声を聞くことができ、励みになっています。中には親がよく買いに来ていて、その子どもも買いに来るようになり、次世代に継承されていることを感じています。農家の数は減っていますが、農業の未来は明るいと信じています。
▼地域の連携が必要
塚本明治(つかもとめいじ)さん
○神座みかんの変遷(へんせん)
JA大井川のハウスみかん部会には当初40人いて、内10人が神座の農家でした。今では全体で4人、内3人が神座の人となってしまいました。露地(ろじ)栽培の農家も減っていますが、平地では隣の農家に譲ったりして、面積的にはあまり変わっていないと思います。
昔はみかんの価格が安定せず、お茶を主とする人が多かったですが、今では定年退職後にみかん農家を継ぐ人も多くなってきました。ファーマーズマーケットができて、自分の名前で売れる場所ができたことも大きいです。また、栽培される品種も多くなり、一年を通して販売されるようになり、価格も安定するようになりました。
○時代に適した変化を
みかんには、表年(おもてどし)と裏年(うらどし)があり、収穫量に差が出ます。近年では、夜との寒暖差が少ないことや乾燥・長雨など天候の影響、今年は害虫の影響で作りづらくなっています。
これまでは、地域で一緒に何かをするという動きはなく、それぞれの農家が個別に栽培、販売してきました。しかし今は、地域を盛り上げるためには、地域が一体となって取り組むことが必要だと感じています。品質や品種の管理などさまざまな課題はありますが、統一した方法で栽培できれば、神座みかんの一体感が生まれると思います。遠方からも買いに来る人がいるからこそ、価値を高めていきたいです。
■神座地区の原石(みかん)をさらに輝く宝物に
○廃棄量削減の取り組み
神座地区では、市場に出荷できないみかんを有効活用した、ジュースやジャムなどの加工品の生産は、これまであまり行ってきませんでした。しかし、オレンジジュースの価格高騰など社会情勢が変化する中、6次産業化への有効活用を検討しているところです。
昨年、地元農業の活性化とSDGsへの貢献を目指して、ホテルアソシア静岡が神座の摘果(てきか)みかんを活用した料理を提供しました。
規格外の農作物は、市場に出回る前に廃棄処分されてしまうことが多く、その廃棄量は食品ロスの統計には含まれません。これは「隠れ食品ロス」とも呼ばれ、その活用を模索している農家が多いといわれています。同ホテルと神座のみかん農家が連携し、お互いの考えが一致したことで実現しました。今年も同ホテルで、摘果みかんを使った料理が提供されます。
※摘果みかん…みかんの成熟の途中で、間引かれる未熟なみかんのこと。
○幅広いビジネスサポート
・産業支援センター 冨永正克(とみながまさかつ)参事
産業支援センターでは、国・県・市の補助金の紹介や企業と企業、企業と人、人と人とのマッチングを行っています。加えて、創業や販路開拓、経営改善などの課題に関して、相談内容に応じた専門家相談やスキルアップセミナー・交流会などを通じて、共に解決を目指しています。ぜひ、お気軽にご相談ください。
問合せ:産業支援センター
【電話】54-5760
○変えるのは、そこに住む住民
みかんの産地である神座で、地域を盛り上げようと新たな取り組みをする「神座みかんを育てる会」。地域振興と神座みかんの価値向上を目指し、住民主体でみかんのブランド化の検討や統一ロゴの作成など、新たなPR方法と6次産業化の研究などを進めています。行政や関係機関を上手に頼りながら、地域の価値を高めるために技術や知識の共有・向上など、試行錯誤しています。
○地域の在り方を考える
地域振興やにぎわい創出は、行政・企業・市民のどれか一者だけでは難しいのが現状です。高齢化など現代の課題には、それぞれが強みを生かして、連携することが大切。また、時代の変化に対応し、柔軟に変わり続けること、挑戦することも必要だと思います。そして、にぎわいを創るには他力ではなく、住民が地域をどのようにしたいのかを考え、行動することが求められます。さまざまな分野で地域のために、活躍している人が存在します。新たに住む人や若い人など、お互いに認め合い、高め合うことが地域の住みやすさに、つながるのではないでしょうか。
今はまだ原石かもしれない。でも「神座みかんを育てる会」の活動によって、この地区のみかんが地域にとってかけがえのない、輝く宝物となることを待ち望みます。すべては、神座地区の未来のために。
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