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島田人 Shimadajin File #151

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静岡県島田市

■地域の絆を深める祭りを、これからも続けたい
旧初おせん女踊り保存会会長
塚本辰巳(つかもとたくみ)さん(阪本)

平成31年にしまだ市民遺産に認定された「旧初おせん女(じょ)踊り」は、口頭から文献へと伝え方を変え、今日まで地域の手で守られてきました。伝統芸能として、また、住民の交流の場として、脈々と伝承されていきます。

■存続のために変わる踊り手
毎年10月に開催される「旧初おせん女踊り」。保存会会長を20年務める塚本さんが、その変遷を話してくれました。
「鳥追い笠に角帯(かくおび)の着流し姿で奏でるお囃子(はやし)と、花笠と振り袖姿で舞う踊り。昔は、どちらも男性がやっていましたが、昭和26年を最後に中断したことで、この形は無くなりました。約30年後、地域の強い思いで復活を遂げた際、男性がお囃子、その奥さんが踊り手と役割が変化。その後は、踊り手の高齢化に伴い、小学生の女の子が参加するようになりました。変える時には、反対意見もあったようですが、地域で一致したのは、この祭りを残したいという思い。その一心で、時代に即した変化を受け入れてきたのだと思います」

■口頭から文献による伝承へ
「ある年、大学で民俗学を研究する教授から『祭りの文献資料はありますか』と尋ねられました。資料は無く、口頭伝承で受け継がれていることを説明しましたが、その時に初めて、このまま未来に伝えることができるのか不安に感じました。その思いは、他の保存会のメンバーも同じ。そこで、歴史をまとめた冊子を作ることになりました。資料が無いので制作は困難を極め、過去を知る人を訪ね歩いたり、自宅に眠る写真を何度も探してもらったりしました。その結果、3年かけてようやく『旧初おせん女踊り』を発行。今では祭りの歴史を伝える文献資料として、重宝しています」

■祭りが促す住民同士の交流
苦労して文献資料を完成させた塚本さん。祭りを後世に残す意義について語ります。
「本番前には、練習を8回程行います。従来、直前に決めていた練習日を、近年では毎週金曜の夜に固定しています。日程を決めたことで予定が立てやすくなり、多くの人に参加してもらえるようになりました。会場には、小学生やその保護者などが集い、大人たちは話に花を咲かせたり、子どもたちは練習で異学年と交流したりと、いろいろな人の笑顔があふれる場となっています。300年近く続くとされるこの祭りを、地域の伝統芸能として残すことは、意義のあることです。他方で、祭りが住民の交流の場となっていることも、私が後世に残したい理由の一つ。練習から本番まで、祭りに参加して楽しかったと思ってもらえるようになれば、うれしいです」
伝統だけではない祭りの価値を、大切に思う塚本さん。その思いは、次世代の住民たちへと受け継がれ、今後も地域のつながりを強くします。

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