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No.192博物館だより タヌキのお話

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高知県越知町

皆さんおなじみの動物、タヌキのお話です。
タヌキは「狸(けものへんにさと)」と書きます。昔から人の身近にすみ、多くの昔話に登場します。愛媛県、香川県、徳島県ではタヌキを神様として祭っている神社が多く、大切にしています。ところが、高知県にはタヌキの神様はいなくて、高知の人はタヌキの脂をとって、薬として利用している地域があります。越知町もそのうちの一つです。
タヌキの大きさは、全長50~60センチメートル、体重3~5kgで、イヌの仲間です。東アジア地域にだけすんでいて、日本では北海道、本州、四国、九州とその周辺の島々にいます。沖縄県にはいません。海岸付近から亜高山帯までの森林でくらし、人が生活する里山でもよく見かけます。最近は市街地でくらすタヌキも現れ始め、交通事故に遭うタヌキも少なくありません。
タヌキの生活は夜型です。昼間は藪の中や土穴、大きな岩の隙間、排水溝の中などで眠り、夕方から翌朝まで食べ物を探してうろつきます。
食べ物は、木の実や昆虫、小動物など何でも食べ、暮らしている場所や季節に合わせて、手に入りやすいものを利用します。人の食べ物も大好きで、人からもらえることがわかると、毎晩やってきてねだるようになります。
タヌキは決まった場所にふんをして、ためふん場をつくります。一カ所のためふん場を、多くのタヌキが使う場合もあり、よく使われる場所は多くのふんが積み重なり、ふんの山ができます。
春になるとペアをつくり、初夏には巣穴の中で2~6頭の子どもを産みます。生まれたばかりの子どもは、全身真っ黒で、目も耳も開いていません。父ダヌキは子どもをとてもかわいがります。母ダヌキが食べ物を探しに巣を離れているときは、代わりに父ダヌキが子どものそばに付いて世話をします。子どもは生まれてから50日ごろには、親について食べ物をとりに出かけるようになります。そして夏の終わりごろ、子どもは親から独立し始め、翌年の春の繁殖期を迎えるころには、親から離れて暮らすようになります。親は、翌年も同じペアで暮らします。子どもは、生まれた翌年には繁殖できるようになり、新しい家族をつくって暮らすようになります。
私はタヌキとの縁が深く、私の人生の方向性を決定したのはタヌキです。大学に入った時に所属した学生サークルがタヌキの研究をしていました。大学の4年間は長野県の入笠山というところでタヌキの調査をしていましたが、この活動を大学院でもやれることになって、進学しました。大学院でタヌキの家族の行動を研究して、博士号をいただきました。そして平成14年4月に高知県に移ってきました。まあ、四国にはタヌキが多いこと!
これまでの約20年間、横倉山を含む四国全域で動物調査を続けてきていますが、タヌキの情報を手に入れられない地域はほとんどありませんでした。海岸近くから高い山の上まで、田んぼのまわりや河川敷、標高1000m以上の落葉広葉樹林にまでタヌキたちが生活していることを知りました。
何年か後には、私が知った四国のタヌキ、横倉山のタヌキ、そして世界のタヌキの話題をまとめた「大狸展(仮題)」の開催をたくらんでいます。

横倉山自然の森博物館学芸員 谷地森秀二

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