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南部町のいきものたち(208)

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鳥取県南部町

■納得の命名?
2023年7月6日、自転車で花回廊まで行ってきました。その道中、ちょうど朝鍋ダムあたりで「おや?」と目に入ったのが、この小さなバナナのような奇妙な物体。久しぶりに出会えたエゴノネコアシアブラムシが作った虫こぶ(虫えい)です。以前、鍋倉でも確認しましたが、手が届かない場所だったので写真を撮れずじまいでした。今回は触れる高さだったので、迷わず自転車を止めて取材モードに。確かに猫の足に似ています。一見、花なのか実なのか分からないその姿は、虫こぶ界でも印象的な種類かもしれません。エゴノキは花や実がある時は、「ああエゴノキだ」と他の木と区別がしやすいのですが、葉だけのシーズンは見分けづらく、この虫こぶがあることで、「あら!ここにもエゴがあったのね!」と、その存在を教えてもらうこともあります。

■割るのを忘れた!
写真を撮ってすっかり安心して帰宅したあと、「しまった!中身を割ってみればよかった!」と、かねてからの宿題をすっかり忘れていたことに気がつきました。実は猫足を作ったエゴノネコアシアブラムシの姿をまだ見たことがなかったので、一体どんなコだろうかと気にかかっていましたが、絶好の機会を逃してしまいました。小さな生き物が、身を守るために植物の形を変えて自分の家にするという、なんとも不思議な進化ですが、植物のほうはえらい迷惑なことかもしれません。

■アシボソと往復
エゴノネコアシアブラムシは、エゴノキだけで生活史が完結すると思っていたのですが、もう一種類絡んでいて、この虫こぶから飛び立った有ゆうし翅型の成虫が、今度はイネ科のアシボソという植物に飛来します。そこでまた仲間を増やして、そのうち翅がある成虫が出てきてまたエゴノキに戻るのです。ところが私はまだアシボソをしっかり見たことがありません。イネ科はそっくりさんが多いので、見分けられる自信はないのですが、いつかアブラムシの本体とアシボソと、虫こぶの中身をちゃんと撮影するという新たな宿題ができました。当分退屈しなくてすみそうです。

自然観察指導員 桐原真希

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