■海の呼び方~サンゴ礁につけられた名前~
島の先人たちは自分たちを取り巻く自然の風景―浜、岬、サンゴ礁のリーフの裂け目、海岸から少し離れた岩など―にも名前をつけています。今回はドローンで撮影した写真とともに海にかかわる地名を紹介します。
○クダカと呼ばれたウミンチュ
沖縄県久高島(くだかしま)のウミンチュは、古い時代から高い漁労・航海の技術をもっていたことで知られています。その活動範囲は広く、徳之島でも彼らの足跡がみられます。
今から210年前、1814年のことです。徳之島は「大凶年(だいきょうねん)」となり、飢える人びとも出ていました。その状況を薩摩藩庁へ報告するため、久高島と渡名喜島(となきじま)の舟をチャーターし、3人の島の役人が鹿児島に渡りました。緊急事態のため、なるべく早く鹿児島に報告する必要があったと思われます。久高島ウミンチュの航海技術の信頼度が高かったのでしょう。
さて、徳之島町北部の山集落の海にはクダカオリグチと呼ばれるサンゴ礁の割れ目にある小さな入り江があります(図1)。かつて久高島のウミンチュがここを利用していたことに由来していると考えられます。
○なにが獲れたか
そのサンゴ礁付近でなにが獲れるか、そのような情報も地名に残されています。たとえば、井之川集落の南側の海には、ガチィチィグモイというサンゴ礁のくぼ地があります(図2)。ガチィチィとは島の言葉でウニ(シラヒゲウニ)のことです。現在では、シラヒゲウニの収穫量は激減しており、その点でも、かつての島の人びとの食文化を伝える大切な地名です。
ほかにも井之川中学校下の海には、ムテナングルというサンゴ礁の地名があります。ムテナとはクロハギ(ニザダイ科)という魚を指す方言です。ここではクロハギがよく釣れたのでしょう。
このように、サンゴ礁につけられた地名には、島の人びとがそこをどのように利用していたのかなどの豊かな情報が埋めこまれています。大切な「シマ遺産」として、記憶と記録に残していきたいと思います。
(町誌編さん室 竹原祐樹)
※図は本紙をご覧ください。
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