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【特集】語り継ぐ~がんがらの会~

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鹿児島県 志布志市

「この時、順子は10才でした」
このフレーズで始まる紙芝居の上演を市内の小・中学校を中心に続けている2人組がいます。これまで、取材先で何度か紙芝居を見る機会があり、今回の特集テーマ「語り継ぐ~戦後79年~」にて紹介したいと考え、7月26日、岩根賢二さんと岩満笑子さんを取材しました。

―令和4年12月、有明小学校で紙芝居と戦争体験講話があった際、取材で伺いました。この取組はいつからされていますか。また取組のきっかけはありますか。
岩根:それこそ学校で披露したのはその時が初めてです。取組のきっかけは、令和4年8月の新聞記事です。曽於市の笠木小で紙芝居の朗読があったという記事が掲載されており、その舞台が有明小(当時の野吉国民学校)だったため、私は紙芝居の原作者の同級生が地域にいないかすぐに探しました。
岩満:私が原作者の衛藤順子さんの同級生というわけです。
岩根:すぐに笠木小で紙芝居を朗読したさわ写真館(曽於市)に制作を依頼しました。私は図書館ボランティアがんがらの会に所属し、普段は読み聞かせ活動をしています。この紙芝居はがんがらの会として制作し、図書館へ寄贈しました。訪問先では紙芝居の朗読は私が担当し、その後で岩満さんに戦争の体験を語っていただく。この流れで活動を続けています。

―紙芝居は10才当時の衛藤順子さんの生活が鮮明に描かれていますね。
岩満:順ちゃんは転校で野吉国民学校に4年生の頃、1年間一緒に勉強しました。順ちゃんはとても絵が上手でした。画家になりたいと言っていました。画家ではなく、薬剤師になりましたが、それでも紙芝居の原作の絵本を出版されたんです。全然戦争を知らない子どもたちに何らかの形で当時の記憶を残したいとの思いからでしょう。

―現在まで、どのような機会に紙芝居の朗読、戦争体験講話を行っていますか。
岩根:ありがたいことに、学校だけでなく、図書館やサロン、教職員研修会などでも上演させていただいています。まだ全ての学校で上演できていないので、もっと多くの子どもたちへ伝えたいです。
岩満:私も自分の経験をもっと子どもたちに伝えたいです。学校に通っている途中に、空襲警報のサイレンが鳴り、どこにも身を隠すところがないときは、その場に身を伏せ、自分の指で目と耳を塞ぐよう教わりました。とても怖く、今でも当時の記憶は忘れられない。どうかこのような思いを子どもたちにはしてほしくないです。
岩根:原作者の衛藤さんも同じ思いです。この絵本で一番伝えたい場面は、学校で空襲を受け、タコツボに飛び込んだ時の覚悟だそうです。紙芝居のセリフにはこの思いが追記されています。怖かったけれど、泣くことをせず、10才の少女が、死を覚悟しなければならない。このことが「戦争はあってはならないことだ」と物語っています。今では考えられないことですからね。

―この取組を続けて良かったなと実感したことはありますか。
岩満:話をさせていただいた学校などから子どもたちの感想文をいただきました。戦争に関して子どもたちが一生懸命に考えてくれていることが分かります。涙を流しながら話を聞いてくれる児童もいます。ありがたいことだなと思っています。
岩根:有明中学校は文化祭でこの紙芝居を題材に自分たちで劇を作り上げて上演をしたんです。このことはとても嬉しかったです。自分たちで語り継いでくれたわけですからね。

―戦争を語り継ぐ、子どもたちの世代へメッセージをお願いします。
岩根:戦争の始まりは、細かくみていくと、自分たちの些細な言い争いなどがきっかけ。とにかく仲良く過ごしてほしいです。
岩満:私は子どもたちには人を思いやる気持ちを持ってもらいたいと思っています。海外では今も戦争が起きているのが現実。怖くて見てられない。いつまでも戦争のない平和な日本であってほしいです。

◆取材を通して
来年は戦後80年。それに合わせて特集を組む広報紙が多いのではないか。それなら、今年、一年でも早く特集することで、節目の年をより有意義に迎えられるのでは―。そう考えたことが今回の特集のきっかけとなりました。
それぞれの取材を通して、実感したことは、「語り継ぐ」ことを自分たちに与えられた宿命として捉え、並々ならぬ決意を持って活動されているということです。一度の活動に参加していただける人数は数人から多くても数十人。その活動を何度も繰り返し続けることが語り継ぐことの一番の近道。
生の声が持つ、伝える力には到底及びませんが、広報紙は1万部以上を発行しているので、「語り継ぐ」活動を掲載することで、少しでも多くの方に何かを感じていただければとの思いで掲載した記事です。
是非、皆様からの感想・ご意見をハガキ・LINEにてお待ちしています。

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