この度、日置市吹上歴史民俗資料館で、黒川洞穴出土品の展示を行うことになりました。興味のある方はぜひ、お越しください。
○黒川洞穴の学術調査
初めての調査は昭和27(1952)年にまで遡ります。洞穴の近くにあった当時の坊野小学校に勤務していた辻正徳氏が洞穴に落ちていた土器・獣骨などを発見しました。この発見をきっかけとして、昭和27年・39年・40年・42年の計4回にわたって発掘調査が行われました。これらの学術調査には、八幡一郎氏、鏡山猛氏、加賀光夫氏、江坂輝弥氏、鈴木重治氏など著名な考古学者が調査に参加していることからも、当時の学会でも注目を浴びた洞穴遺跡だということが分かります。
○黒川洞穴のここがスゴい!
洞穴遺跡のなかでも、縄文時代から近世までのおよそすべての時代に、人の生活や儀礼の痕跡が見つかっています。縄文時代を中心として狩猟採集のキャンプ地としながらも、時代によって役割が変容し人々の痕跡が多く残された複合遺跡です。もっとも大きな洞穴の中央には中世から続くとされる黒川神社がまつられており、神社参拝や観光スポットとして、大切に受け継がれています。
なかでも、「黒川式土器」とよばれる縄文時代終わりごろの土器は、黒川洞穴が名前の由来(標識遺跡)となっていて、考古学者に広く知られています。
そんな黒川洞穴の調査では、土器や石器以外にも、貝類や魚類などの海産物のほか、イノシシやシカの骨なども見つかっています。ツキノワグマや、絶滅したニホンオオカミの骨も見つかっていて、当時の動物環境も知ることができる重要な調査成果です。この調査成果から、2004年に鹿児島県指定文化財(記念物)となっており、指定から20年の節目を迎えます。
○河口コレクションって?
河口貞徳氏(1909-2011)は、鹿児島県の考古学研究の草分け的人物です。昭和20年代から県内の数多くの遺跡発掘調査に携わり、その成果や論文を数多く発表してきました。
101歳の生涯に幕をとじたあと、膨大な考古資料が「河口貞徳氏所蔵考古関連資料」として鹿児島県立埋蔵文化財センターに寄贈されました。
◆企画展
よみがえる「河口コレクション」の世界―黒川洞穴里帰り展―
会場:日置市吹上歴史民俗資料館(午前9時から午後4時30分まで)
料金:企画展示中は無料。
期間:6年7月8日(月)~9月12日(木)の平日のみ
(土日祝日は閉館)
※ただし、企画展示期間中の隔週日曜日
(7/14・7/28・8/11・8/25・9/8)は特別開館。
◆講演会・ミュージアムトーク
開催日:令和6年8月25日(日)
場所:日置市吹上中央公民館ホール(午後1時30分~午後4時まで)
演題:
・黒川洞穴の整理作業でわかったこと」
講師…堂込秀人氏(県立埋蔵文化財センター職員)
・「黒川洞穴の発掘調査と吹上の縄文時代」
講師…池畑耕一氏(同センター元職員)
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