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【人の風景】霧島に生きる Vol.196

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鹿児島県霧島市

■森の門番・なばやまさん
森の中に入ると、整然と並べられたほだ木に目を奪われます。キンモクセイが香り始める頃、ほだ木から顔を出し始めるシイタケ。その森の恵みを牧園町で育て続けて60年余りになるのが、首藤道男さん(78)です。首藤さんはシイタケ生産に関わるこれまでの功績が認められ、今年5月、シイタケ生産者として県内で初めて特用林産功労者の表彰を受けました。
「昔はシイタケのことを『なば』と呼んでね。うちみたいなシイタケ生産者は『なばやまさん』って呼ばれていたよ。うちにはなば観音様の像もあるよ」とシイタケを持った観音像を大切にしている首藤さんは、妻・咲子さんと二人三脚でシイタケ生産を専業で行っています。「おやじがシイタケを作っていたから、シイタケ生産者になることになんの疑問もなかった。自分の腕次第のこの仕事は、天職だと思ってるよ」と誇らしげに話します。首藤さんは中学校を卒業すると本格的にシイタケ栽培を始め、シイタケ栽培の本場・大分県で技術を学ぶなど研さんを積んできました。首藤さんが作るシイタケは、品評会で何度も最優秀賞を獲得するなど高い評価を得ています。さらに県椎しい茸たけ農業協同組合の幹事を務めるなど、シイタケの振興や後進の育成にも力を尽くしてきました。
シイタケ生産は、切り出したクヌギなどの原木に、シイタケ菌の駒を打ってほだ木にすることから始まります。そのほだ木を栽培に適した場所(ほだ場)に移して、シイタケを育てます。首藤さんのほだ場は風通しの良さにこだわった傾斜地で、木漏れ日の差し込む雑木林の中。収穫時期には日に何度も傾斜地を往復します。「良いシイタケを作るためには何よりも良い環境が大事。楽をしようとして作業がしやすい平坦地で育てたりしても駄目だったね。自分にできることを積み重ねると、頑張った分だけ良いシイタケができる。自分との闘いだよ」
一度原木を切り出した木は、次に使えるぐらいまで育つのに約20年かかります。「最近はせっかく出た芽もシカの食害に遭っていてね、次の人のために電気柵をして森を守るようにしているよ。山で木が育ち、木から落ちた葉が土を豊かにし、土を通った水が川から海へと流れる。山を守ることが錦江湾までつながっているんだ。自分のことは森の門番だと思ってるよ」と首藤さんは目を細めます。
森に生かされ、森をつないできた首藤さん。「こうして続けてこれたのも相棒が支えてくれたから。二人で続けられる限りシイタケを作り続けたいね」

首藤 道男さん(78)
牧園町出身。万膳太鼓踊り保存会会長や堂山ホタル同好会代表を務める。県道沿いにユウスゲやヒガンバナを植栽し地域の彩りも守る。牧園町在住。

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