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平成21年台風第9号から10年 災害の教訓をつなぐ2

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兵庫県佐用町

◆教訓を伝える防災教育
佐用町で小学生の防災教育に携わる、兵庫県立大学環境人間学部 木村玲欧教授に、防災学習の目的と重要性について聞きました。

[プロフィール]
兵庫県立大学環境人間学部教授 木村玲欧(れお)さん
専門分野:防災心理学、防災教育学
内閣府・防災教育チャレンジプラン実行委員会委員、関西広域連合・関西広域防災計画策定委員会委員、兵庫県・ひょうご安全の日推進県民会議企画委員会委員などを務める。
平成27年度から、町内の小学校で防災教育の監修にあたる。

◇「わがこと意識」をもつ
病気や交通事故などに比べ、災害は自分の身に起こる危機の発生頻度が低いため、「わがこと」意識が起こりにくいものです。自分は大丈夫だろうと思っていては、命を失う危機に足元をすくわれます。例えば「こういうことが起こったときは、こういう行動をする」と行政や地域、学校教育で意図的に取り組まなければ、「災害は危険なもの」という意識は根付きません。佐用町の水害は10年前。今学校で勉強している多くの子どもたちには、生まれる前のことです。もはや昔話のようなもので、生まれる前の話というのはなかなか伝わりません。発生頻度が低いものは、あっという間に風化し、忘れられてしまう可能性が高くなります。災害のことを後世にしっかり伝えることが必要です。

◇災害の教訓は地域ごとに異なる
災害の教訓というのは、地域ごとに違います。災害の種類だけでなく、地域ごとに被害状況やその後の対応も違います。熊本地震や阪神淡路大震災ではこんな教訓があったとか、佐用町ではこのような地形の中でこんな被害が出たとか、災害で起きたことを教訓の形に翻訳して、伝えていくことが必要です。それは、ただ被災者の話を聞くだけでは伝わりません。防災教育で重要なことは、ただ話を聞くだけでなく、対応のところまで勉強することです。
特に大切なのはハザードマップです。いろんな体験談を聞き、地域の水害の教訓をもとにしながら、実際に今佐用町でどんなことが起こるのかを改めて振り返る必要があります。

◇災害診断をする
健康診断になぞらえて災害診断というものがあります。災害診断で自分の身の回りにどんな危険が潜んでいるか確認しましょう。健康診断で客観的に自分の状況を知り、生活改善しようと思うのと同じことです。身の回りにどんな危険があるのかわかっていなければ、適切な行動はできません。
正しい知識があってこそ、いろいろな情報が出た時に適切な判断ができ、迅速な行動につなげることができます。まずは防災教育で、子どもたちに自分の地域というのは、自然豊かでいいところがたくさんある反面、一転して非常時には大雨が降り、災害の被害を及ぼす可能性があるということを知ってもらうことが重要で、繰り返し伝えていかなければなりません。

◇情報を正しく理解する
今年新たに災害の情報に5段階の警戒レベルが設定されました。大雨や避難に関する情報を5つの区分に分けたものです。
例えばレベル4というのは上から2番目のとても危険な状況です。これが出たら避難行動をとらなければなりません。佐用町ではレベル3で避難所を開設します。レベル3が避難の準備を行い、災害に備える段階です。
そういったふうにわかりやすく5種類に分けた中で、それぞれのレベルがどんな状況を指すのか理解していないと、実際に避難行動に移れません。
しかし、「そんなこと言われてもめんどくさいし、どうせ警報ぐらいじゃ災害はおこらない」という人が出てきます。
その原因は2つあり、まず1つ目は、警報の意味を勘違いしている人がまだまだ多いことです。
警報というのは災害が起きる状況をさすのではなく、災害が起きる可能性が飛躍的に高まるので、自分のスイッチを非日常に切り替えて、災害に備えましょうというものです。
2つ目は、「オオカミ少年効果」です。2、3回何も起きなかったら、間違った知識のもと「どうせ警報が出ても何も起きないから何もしない」と考えてしまいます。まだレベルを設定して数回しか発令されていませんが、各地の避難率は極めて低い状況です。レベル4が発令されても状況の切迫性が伝わっていません。レベル4が今後数回発令されると、「どうせレベル4が出てもたいしたことない」と思いこんで、行動しなくなるおそれがあります。

◇避難行動の習慣化
避難を習慣化し、しっかり行動に移していくことが大切です。実際に、警報が出るたびに避難して、今まで何も起きなかったけど避難行動を続けて、20回以上避難したとき、土砂災害が発生し家が土砂に埋もれ、避難していなかったら死んでいたかもしれないという事例もあります。毎回「わがこと意識」をもって危機管理を続けた結果が、命を守ることにつながります。災害はまれにしか起きませんが、ハザードマップを見て危険だから避難するとか、危険が少ない地域だから外に出ず自宅に留まろう、といったことを何度も繰り返し行って、災害への危機管理を習慣化することが必要です。

◇水害の経験を教訓として
地球温暖化によって、まれにしか起きなかった災害が、今まで以上の頻度で起きるような自然状況に変化しています。自然が変わってしまった以上、人間もしっかり対応して変わる必要があります。そこに立ち返り、いかに災害をわがことととらえるか、そのための防災教育の在り方を考えなければなりません。
水害の経験を教訓として、学校教育や地域防災の中で、正しい知識のもと、適切な判断、迅速な行動を何回も行い習慣化して、もし次に大きな災害が起きた時も、子どもたちがしっかりと避難行動ができるようになるのが、防災教育の目的です。

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