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自治体の皆さまへ

平和への思いを胸に(1)

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埼玉県蕨市

終戦から77年が経過し、当時の戦争の記憶は薄れつつありますが、世界では今なお、戦争が起きています。今月は、かつての蕨での空襲やウクライナのかたの体験談を紹介し、あらためて平和の尊さについて考えてみたいと思います。

軍需工場が複数あった蕨は、昭和20年4月から5月にかけて3回にわたり空襲に見舞われました。1回目は4月12日の正午頃。錦町5・6丁目付近からさいたま市の辻にかけて16個の1トン爆弾が投下されたといわれています。2回目は13日の夜から14日の朝にかけて、爆弾と焼夷弾(しょういだん)の波状攻撃により、南町2・3丁目付近から現在の北小学校までの約1キロメートル、幅200~300メートルの広範囲が火の海となりました。そして3回目は5月25日の午後10時頃。これらの空襲による被害の合計は死者50人、家屋の消失や全壊、半壊など400戸に上り、県内では熊谷に次いで2番目の被害となりました。
それから77年。日本では平和な日々が続いていますが、世界から戦争がなくなったわけではありません。今年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻の衝撃は、私たちに戦争は決して昔話などではないと、思い出させたことでしょう。
本紙3ページでは、3月に蕨に避難されてきたウクライナ人のビクトリアさんのインタビューを紹介します(5月12日取材)。ぜひ御覧いただき、あらためて一人ひとりが蕨市平和都市宣言(下記)に示した平和への思いを新たにしていきましょう。

■蕨市平和都市宣言
昭和20年8月、広島、長崎に人類初の原子爆弾が投下され、早くも40年の歳月が流れました。
その間、唯一の被爆国である我が国は、恒久平和を崇高な理念として憲法に掲げ、自由と正義を愛し、世界平和に寄与してきました。
しかるに今、世界の超大国を中心とした核保有国が競って核軍備拡充を図っていることは、まことに脅威であり、この核軍拡競争に対して、世界のいたるところで、平和希求の叫びがとみに高まりつつあります。
このような国際情勢の中で、戦争は人間が起こすものであり、また人間の力によってこれを防ぐことができることをしっかりと心に刻み、平和で豊かな社会を次の世代に引き継いでいくことが、現代に生きる我々の責務であると考えます。
私たち蕨市民は、平和憲法の精神を守る立場から、非核三原則が厳守されることを強く希望し、世界のあらゆる国の核兵器の速やかな廃絶を願うものであります。
蕨市は、市民の平和を願う心を結集し、ここに「平和都市」であることを宣言いたします。

昭和60年9月9日 蕨市

■戦争で傷ついた子どもたちのためにキーウに戻り全力を尽くしてきます
キーウの教会で結婚式を挙げたのが昨年11月のこと。そのときは、数か月後にこのまちをロシアの戦車が走り、砲弾が飛び交うことになるとは思いもよりませんでした。

ウクライナでは8年前のクリミア半島での紛争以来、ずっと火種がくすぶっていました。ロシアの動きが特に怪しくなってきた昨年末頃になると、夫に「危険だから日本に来なさい」と言われるように。しかし、児童300人の学校長である私は、この子たちを放っておけず、なかなか決断できずにいました。
2月24日、突如、轟(ごう)音が朝の静寂を破りました。自宅近くに爆弾が落ちたと分かると、着替える間もなく、孫と猫を連れて、車で隣国ポーランドへ向かいました。道路は大渋滞で普段なら半日ほどのはずが、ほぼ不眠不休で運転して着いたのは4日後。その後、孫のビザを取得し、来日できたのは3月10日のことでした。
蕨では散歩をしたり、料理をしたりと、家族といっしょに幸せな日々を過ごせています。しかし、姉は今もキーウにおり、夜中も空襲に見舞われるため、建物の中でいちばん頑丈な浴槽の中で寝ています。キーウ近郊のブチャに住む知人の女性は、戦車の音に恐れおののきながら、防空壕(ごう)で長時間身を潜め、口にできるのは湖の水しかなかったそうです。その他にも多くの人が戦闘で傷つき、亡くなっています。そんなウクライナのことを思うと胸が痛みます。
この間、テレビや新聞の取材に応じてきたのも、この惨状を多くの人に知ってもらい少しでも早くこの戦争を終わらせたかったからです。日本の皆さんの支援にはたいへん感謝しています。こうしたなか、私ももっとウクライナのためにできることを、との思いが募り、学校長として子どもたちや保護者、教員を支援し、本格的な学校再開の準備をするため、キーウに一時戻ることを決意しました。夫も私の身を案じながらも、後押ししてくれました。
戦争は絶対にしてはいけません。皆さんも、世界で起こっている出来事に注視し、平和な世界をつくるために、ともに考えてほしいと思います。

○ビクトリア・カミンスカさん
59歳。ウクライナの首都キーウの学校の学長を務める。昨年5月に盧山初雄さん(塚越5丁目・極真館会長)と結婚。結婚後もキーウに居住するがロシアによる侵攻後、日本に避難。5月12日、学校の本格再開のため一時帰国

○ウクライナ
面積:60万3,700平方キロメートル(日本の約1.6倍)
人口:4,159万人
首都:キーウ
言語:ウクライナ語、ロシア語など
情勢:2月24日、ロシアはウクライナへの侵略を開始。現在も戦闘が継続(7月25日現在)
※外務省ホームページより

○蕨市によるウクライナ支援
・ロシアに対し抗議文を送付
2月28日、平和都市宣言を行った市長として、ウクライナから軍を撤退させるとともに、国際社会との対話と協調による外交に立ち戻ることを強く求める抗議文を送付しました。
・ウクライナ人道危機救援金を募集
3月から5月まで市内16箇所の公共施設に設置した救援金箱に寄せられたものや蕨駅での街頭募金(2回)、市職員やその他市民の皆さんからの募金を合わせた7,050,505円を日本赤十字社を通じて送金しました。
・避難民の受け入れ
ウクライナからの避難民受け入れのため、市営住宅2室を無償提供するほか、相談窓口を開設しています。

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