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各務用水物語 永遠の水 33

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岐阜県各務原市 ホームページ利用規約等

作 ・大堀一志
挿絵・廣江貴子

今日、試験通水がされると聞いて半信半疑で見に来ていた西市場村の連中が驚嘆の声を上げた。
「長良川からここまで流れて来たんか、本当に。信じられんなぁ」
「そうじゃなぁ。けど、有難いこっちゃで」 
物珍しさに村中の老若男女が水路に集まっている中、昼すぎに岡田只治が流れ落ちる汗を拭きながらやって来た。西市場村の戸長・赤座源右衛門は満身の笑みで岡田を出迎え労いの言葉を掛けた。 
忠三郎は堰(せき)をいったん閉めてから芥見村の亀山儀兵衛を伴い、水を通した後の水路を注意深く見ながら下流へと歩いた。亀山儀兵衛は水路掘削の責任者の一人だった。途中、皆に渡しておいた赤旗の竹はどこにも立てられてなかった。それでも儀兵衛は時折り水路を覗き込むようにしていた。
「どうやな、儀兵衛サ」 
忠三郎は声を掛けたりしたが、寡黙な儀兵衛は頷くのみだった。 
忠三郎と儀兵衛が西市場村に辿り着いたのは三時をすぎていた。盆すぎとはいえ灼けるような日差しに二人の首筋には汗が塩吹いている。二人が来るのを待っていた岡田只治ら建設委員や発起人たちはお互いに労いの言葉を掛けて喜びあっていた。何はともあれ、ここまで漕ぎ付けたことで完工への目途がついた訳である。 
じりじりと照り付ける西日の中にも時折り吹き渡る風が心地良かった。             

―つづく

【これまでのあらすじ】
明治24(1891)年8月、横山忠三郎の提案で各務用水の試験通水を行った。水路の勾配はほぼ計画通りで、水流が滞る箇所もなく、長良川から取水した水は末端の西市場村まで届いていた…

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