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各務用水物語 永遠の水 31

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作 ・大堀一志
挿絵・廣江貴子 

明治も二十四年の夏を迎えた。一年前の夏の大雨で一部は壊滅的な被害を受けたものの、その後の修復工事も意外なほどに順調に進み工事全体の進捗状況には大きな遅れは生じなかった。それには工事責任者の岡田只治による周到な指示が効を奏したといっても良かった。岡田は若い時からの土木工事の経験が豊かで、大水で堤防が切れかかるというような危ない目に何度も遭遇していた。また経験に加えて様々な知識を持ち合わせていて、いざという際の対応なども素早かった。岡田只治なくして工事の進捗はあり得ない、と誰もが認めていた。 
さらに忠三郎の存在も大きかった。この度の被害に対して速やかに人夫の増員を図り、県当局へ金銭的援助を願い出るなど忠三郎の即断なくしては進まなかった。加えて、芥見村で大量に出た粘土を有効的に利用できたことも先見の明に秀でていたといえる。

掘削工事が順調に進み、この年の旧盆を迎えた頃には、当初の計画の水路がほとんど出来上がっていた。忠三郎は盆の十五日だけは自宅に帰ったが、翌十六日の朝には再び浄念寺に戻っていた。 
そして、盆明けの十七日には発起人を含む工事の主だった者を招集した。
「一度、水を通してみましょう」 
張り詰めた雰囲気の中で忠三郎の声が本堂に響いた。
「はい」 
待っていたかのように下野甚助が答えた。 

―つづく

【これまでのあらすじ】
用水全長の8割ほど掘り進んでいた、明治23(1890)年8月。突然の大雨で崩れた水路を目の当たりにした横山忠三郎は、修復に必要な人夫や予算を検討し、郡役所や県庁に出向き、援助を訴えた。

【市内図書館で閲覧可】
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