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《特集》地域と育てる学び舎 安来分教室 ともに(1)

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島根県安来市

安来市にある県立学校の一つ「松江養護学校安来分教室」。農作業や加工品製造、販売会の開催などといったこの学校の実践的な授業は、分教室の中だけでは完結しません。地域に出て人々と関わりながら学びを育むことで授業の形を完成させます。
市内の他の県立学校よりも歴史は浅い安来分教室。しかし、そこには地域との深い結びつきがありました。

●成長と共につながる心
○地域とつながる授業
今年度で開設12年目を迎える松江養護学校安来分教室(以下、分教室)。この学校には、これまで大切にしてきたことがあります。それは「地域」との関わり―。
学校の活動に、地域の人たちに関わってもらうことで、学校外の人とのコミュニケーションの取り方や人と接することそのものを学べるようにしています。
また、自分が生まれ育ち、今後も暮らしていく安来を知り、地域とつながっていけるような授業を行っています。

○外部の人から得られる学び
分教室の学習には、農作業があります。学校の畑などを使って種まきから収穫までの作業をします。
夏場は暑さと戦いながらの手入れとなるので骨の折れる作業。それでも収穫の喜びを味わえる農作業は学校が大切にしている授業の一つです。
農作業でも地域と関わりをもつため、分教室では地元農家と連携した学習も取り入れています。「毎年、生徒が来るのを楽しみにしてますよ」と話すのは、西村眞知子さん(宇賀荘町)。自身が管理する畑で農作業体験を受け入れています。分教室が開校したばかりの頃、自ら学校に声をかけて生徒に来てもらうようになったと言います。「学校の外の人と関わる機会を持つことは、生徒がこれから成長していく上で必要なこと。また、分教室に地域の人が関わることで、その人たちが持つ知識や経験などから、生徒の皆さんは多くの学びを得られると思います」と力を込めます。
そして、無農薬で野菜などを育てている西村さんは、農業を通じて「食」の大切さも伝えていきたいと笑顔を見せます。

○社会に出てから役立つことを
約10年前からパン製造の指導で分教室に通う人がいます。非常勤講師の田中幸雄さん(切川町)。元々パンを製造・販売する仕事をしていた田中さんは、知人の紹介で分教室に指導に来るようになりました。
「私はパンについての詳しい話はあまりしません。それよりも仕事の大変さや辛い中にも多くの喜びがあるということを生徒に教えます」と自身の役割を口にします。
自分が経験してきたことを話すことで、生徒が社会に出たときに少しでも役に立つようにと考えています。
「パン生地をこねる作業は力がいり、一人でするには大変です。必要なときは誰かの手を借りることや周りを見て人の手伝いをしてあげなさいという話をします」と続けます。
そして、「パンはどの世代の人も買いに来ます。なので、パンの販売は地域の幅広い年代の人と接する機会をもてるんです。生徒たちにはこうした場を大切にして、地域や社会とつながっていけるようになってほしいです」と思いを込めます。

●同じ学び舎で同世代の友と
○自分を知り、これからに生かす
彩り鮮やかな野菜や果物が運ばれる実習棟。収穫した作物は、ここでジャムや焼き菓子などに加工して販売します。生徒が手作りする製品を自ら販売することも大切な学びです。
昨年までは、観光交流プラザでの定期的な販売会や学校で行う地域参観日などで出店を行ってきました。今年度も出店を考えていましたが、思わぬ壁が現れます。新型コロナウイルス感染症による自粛で、予定していた対面の販売会はしばらく中止になりました。
販売会では接客の心得を学びます。その結果、「作物を育てること」「加工して製品を作ること」「販売すること」という、ものづくりから販売までを経験することができます。これにより、将来の職業選択や自分に何が向いているのかを知ることもできます。
経験からの学びで力をつけ、また、自分の力を知ることで、社会に出る準備をします。

○道は違えど、将来に向けて
今年度初めて対面での販売を行ったのは、安来高校(以下、安高)の体育祭のとき。会場となるテントにはビニールカーテンをつけ、スタッフはマスクとフェイスシールドを着用して行いました。久しぶりの対面販売で生徒は緊張気味。それでも、接客していくうちに少しずつ慣れ、元気よく「いらっしゃいませ」と声を出したり、手際よくレジを打ったりしました。
安高で行う販売会は、同世代の仲間に日頃の活動の成果を発揮する場でもあります。プレッシャーになる面もありますが、共に成長していることを見てもらうことができます。
分教室と安高。学習の仕方は違いますが、生徒たちは同じように、将来のための「力」を蓄えています。

●松江養護学校安来分教室
知的障がいがある生徒の学びの場として平成21年に開設されました。
これまで、地域産業と連携した学習を展開。企業や農家などでの職場実習や地元イベントへ参加し、地域と一体となって障がいのある生徒が社会に出て活躍できるよう、成長を支えてきました。
佐久保町。現在、生徒数15人。

●インタビュー
安来高校 柳樂(なぎら)眞悟校長
「同世代の仲間と一つ屋根の下で一緒に成長できる」。これが分教室さんと活動して私が感じることです。
うちの生徒は入学してすぐに分教室の先生から、どのような生徒さんがいるかや活動内容などの話を聞かせてもらっています。分教室さんの取り組みへの理解を深めてから、実際に関わっていけるようにしています。
実際に、体育祭やロードレースなどを一緒に行うとき、生徒たちは共に学ぶ仲間として垣根なく接しています。また、分教室さんと関わることで、生徒は、「共生社会で生きる」という視点など、幅広い考えを持つことができるようになっていると思います。
これからもお互いの学校の生徒に良い刺激となる関係を築いていければと考えています。

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