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霞ヶ浦の帆引き船 伝統の保存・継承(2)

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茨城県かすみがうら市

○第2部 パネルディスカッション
第2部では、「100年後の操業を目指して」と題し、帆引き船の操業に関するパネルディスカッションが行われました。
帆引き船に関する各市の取り組み、現場でのやりがいや苦労、帆引き船の広報・PR、船や各種装備などの保全管理、今後の展望など、充実した意見交換が行われました。
以下では、その内容の一部を紹介します。

[質問]帆引き船の操業に携わる皆さんから、現場での苦労や喜びなどをお聞かせください。
[土浦市観光協会 浅川善信(あさかわよしのぶ)さん]
覚えることが多く、操業回数も限られているため、後継者の育成には苦労しています。年が近い先輩が後輩の指導にあたっていて、昔のような「見て学ぶ」方法から「優しく、丁寧に教える」方法にシフトしてきています。
国の選択無形民俗文化財となったことやサントリー地域文化賞の受賞などによって、特に若手がやりがいを感じ、士気が向上しています。
[麻生漁業協同組合 鬼澤弘明(おにざわひろあき)さん(行方市)]
(生業としての)帆引き船の最後の船乗りであった前組合長が今年9月に亡くなり、操業は手探りの状態です。現状、帆引き船の操業者には若手が多いのですが、まだ「伝統の保存」という意識は低いように感じています。
お客さんに帆引き船の美しい姿を楽しんでもらうことや、伝統を次世代に継承していくという活動に、とてもやりがいを感じています。
[保存会 齋藤等(さいとうひとし)さん(かすみがうら市)]
風の強弱などに応じて、当日操業をできるか否かの判断や、操業時に各部の的確な調整判断をするのはとても難しく、苦労しています。楽しみとして、風速2、3mの時に満帆で帆走すると、大変気分が良いものです。
年々、指導者や後継者が減少傾向です。ホームページなどで公募をしてみてはいるのですが、なかなか応募がありません。この点が課題です。

[質問]100年後の操業に向けて、帆引き船の将来や将来像についてお聞かせください。
[土浦市 安藤真理子(あんどうまりこ)市長]
140年前に編み出された漁法が、今も連綿と続いていることは、とても重要なことと考えています。漁法を編み出し、改良してきた先人の皆さんの苦労はもとより、現在帆曳船の操業に携わっている方々に対する深い感謝と敬意を感じています。船体や漁具の素材などの変化は、時代の流れとして仕方がないところですが、大切なことは帆引網漁の技術を絶やさないことです。そのためにも、技術保有者の皆さんと連携を密にし、また3市との連携をさらに強化して、「帆曳船ブランド」を構築していくことで、地域に明るい未来が見えてくると思います。
[行方市 鈴木周也(すずきしゅうや)市長]
3市で観光部署・観光協会や教育委員会の横の連携も視野に入れていくことを提案したいです。帆引き船の網を入れて船を横に滑らせるという漁法は世界的にも珍しく、歴史的に重要なものです。また、船体には地元産の木材が使用され、取れた魚は地元で水産加工品となります。地域のストーリーに深く関わっているのが帆引き船なのです。この「物語」を観光につなげていくことや子どもたちに伝えていくことも、大切なことと考えています。これからは、AIなど新たな技術を取り入れながら、この技術を残す、または新しいものにしていく必要があると考えています。
[かすみがうら市 宮嶋謙(みやじまけん)市長]
保存会も連合会的なものを組織していただき、操業技術の連携についても、さらに3市で協力していければと考えています。帆引き船は、これまで2つの捉え方で保存・継承されてきました。1つは歴史文化としての捉え方、もう1つは観光資源としての捉え方です。これらを軸に、多くの方が保存・継承活動に関わってきています。私は、ここにもう1つ「環境面」の軸を加えたいと考えています。自然と人との共生・調和の目指すべき姿として帆引き船を捉え、私たちが進んでいくべき社会の象徴として、国内、そして世界に向けてその魅力を発信していきたいと考えています。

※「ほびき」の表記は、各市で使用されているものを用いています。

■伝統漁業の継承者―140年の歴史を背負い出航―
保存会の活動の中で、帆引き船を後世に伝えていくための直接的な役割を担っているのが「後継者育成部会」です。勇壮かつ麗美な帆引き船は、部会員の皆さんの腕によって操業されています。

○後継者育成部長に聞く『帆引き船の操業』
齋藤さんは、父親が漁師で帆引き船に乗っていたため、自身も中学生の頃に漁を手伝っていたとのこと。
帆引き船の操業について「天候を読み、実施・中止の判断をするのが難しい」「一番の課題は後継者を増やすこと。今は教本や映像資料もあるので、学びやすい環境は整ってきている」「命がけの部分もあるが、満帆になった帆を見上げた時、その美しさに喜びを感じる」と語ってくれました。伝統漁法を受け継ぎ、多くの方が見学に訪れていることについての思いを尋ねると、「まあ、誇りに感じている部分もあるな」と、少し照れ臭そうに笑っていました。

○待望の志願者『期待と不安』
今年の夏に入会したばかりの谷山隆一さん。鉾田市桜本在住。新聞で帆引き船の継承者募集の記事を見て、「やってみよう!」と決意。入会に踏み切ったのだそうです。漁業の経験はなく「自分にできるのか」という不安もあると語ってくれました。
インタビュー時が初めての参加。まず随伴船に乗り、船になれるところからでした。随伴船から帆引き船を見た感想について、「力仕事で大変そうだった。とても綺麗だった」と話していました。
齋藤等さんも、「貴重な志願者。ぜひ頑張ってほしい」とエールを送っていました。

○霞ヶ浦が育んだ宝物を次世代へ
発明から100年を超え、現在まで技術が受け継がれ操業されている帆引き船。この伝統漁法の保存・継承は、多くの方々が携わり、心血を注ぐことで成し遂げられてきました。
「帆引き船発祥の地」にくらす私たちは、もう一度帆引き船の持つ多様な魅力について目を向ける必要があるのではないでしょうか。それこそが、帆引き船を次の100年まで伝えていくための、第一歩となるのかもしれません。

○伝統の担い手を募集
保存会では、帆引き船の操業者を随時募集しています。
100年後の操業を実現させるため、一緒に帆引き船に乗りませんか。
少しでも興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にご連絡ください。

問合せ:保存会事務局(歴史博物館内)
【電話】029-896-0017

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