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≪特集≫日本の食文化を支えるコンブ!!!!(2)

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北海道新ひだか町

◆漁師さんにお話を聞きました!!コンブ漁の昔と今
昔は、父と一緒に木造舟(もくぞうせん)に乗り「早櫂(サッカイ)(船尾を支点とし操作する木製パドルに相当するもの)」を漕いで沖に出て、今と同じく「カギ(漁具)」を使いコンブを採っていました。
護岸まで「ゴロやスジ(丸太木)」を使って舟上げしたり、「おかまりさん(コンブを干す人)」も、コンブを肩に担いで長い砂浜を干場(かんば)まで運ぶなど、重労働なうえ、服も砂まみれになり汚れて大変でした。
そんな中でも、中学生が「コンブ採りのアルバイトをしたい」と言ってきて、よく受け入れていましたし、魚はたくさん取れ、コンブも質・量ともに良かったです。
現在は、船に取り付ける船外機も馬力が上がり、漁場へ行く速さが各段と増し、陸(おか)への荷揚げもクレーンや車を使うようになって、とても便利になりました。
ただ、コンブ漁を手伝う人手が足りないことや、昨年の赤潮被害など水温上昇による影響のためか、最近は長くて黒々としたコンブが少なくなってきているように感じます。

▽コンブ漁の秘訣など
コンブ漁は、自然乾燥のため、天候に左右されるところが難しい点の一つです。大型乾燥機を使うと短時間で乾き、経費節減にも繋がり効率的ですが、天然コンブを天日干ししたものには敵わないと感じます。
漁具には「カギ」と「ネジリ」があり、どちらも長さ2〜5mほどの棹(さお)の先端に金具が付いています。
カギは、陸(おか)近くの浅みのコンブを棹先(さおさき)部分ですくい上げ、船に引き寄せて採るもので、先端にL字状の金具が付いています。
ネジリは、棹先(さおさき)がらせん状になっており、漁期後半に水深の深い場所のコンブを巻き採るように使います。
自分の場合は、時期ごとに良い漁場へ行き、漁期後半でもコンブに傷がつかないカギを使い、船縁(ふなべり)にコンブをすくい上げて上質なものだけを選び「いかに良いコンブを採るか」を心掛けています。

-漁師歴73年(三石越海町)
木村 忠志(ただし)さん(88才)
昭和27年の中学卒業と同時に、15歳から父の船に乗り漁師を始める。明治生まれの祖父から続く3代目として家業の漁業を継ぎ、コンブ漁以外にも、10tの漁船で乗組員7~8人とともにイカ、カレイ、タコなどのさまざまな魚を取っていた。米寿を迎えた現在も、カギを素手で持ち、採りコンブ漁を行うほか、毎朝「網外(あみはず)し(網から魚を外す作業)」をするなど、この道73年の現役バリバリの漁師さん。「健康であることと、コンブ採りが好きだから、長く続けられている」と笑顔で話す。

◆和食とコンブ
平成25(2013)年、「和食=日本人の伝統的な食文化」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されました。和食は「だしの文化」とも言われ、素材が本来持っている味を「だし」の「うま味」が引き立たせる料理です。「だし」の素材であるコンブが、国の内外から注目を集めています。

▽10月15日~16日 スペイン・バスク州ビルバオ市の3つ星レストランシェフらミツイシコンブを視察
スペインバスク地方ビルバオ市のミシュランガイド3つ星レストランのシェフら6人が、和食の「うま味」の探究のほか、ミツイシコンブ(日高昆布)の利活用とバスク地方の海藻利活用への知見を深めることを目的に、10月15日から16日にかけて当町を訪れました。
視察団は、コンブの生産・加工販売をしている漁師さんや、コンブ粉末を飼料に加え黒毛和牛を育てる農家さんを訪れ、それぞれの生産・加工技術や郷土への思いなどについて意見交換を行いました。また、町内飲食店でコンブや鹿肉などの地場産の食材を使った料理を作り、その調理過程や会食を通じて店主や生産者らとの交流を行いました。
北海道に6日間滞在し、これまで鹿部町や白老町、えりも町を訪れた視察団の代表マリアーノ氏は「日ごと、日ごとにコンブの素晴らしさを感じる。海の宝であり、日本の宝です。コンブへの可能性を感じる」と率直な思いを語りました。

※ スペイン・バスク州ビルバオ市は、世界の美食家たちが足しげく通う世界有数の美食と芸術の都市。

◆人の縁を紡(つむ)ぎ食文化の多様性を育む昆布が創る豊かな地域
昆布は生産地の生育環境の違いにより、形状、食味に特徴があり、品種ごとに主な出荷先や調理用途が異なるなど、他の食材とは大きな違いがあります。全国で郷土料理や、年中行事とも深く関わり、地域独自の「食」を育み、「注連飾(しめかざ)り」「鏡餅(かがみもち)」など、地域の伝統文化を支え、その継承に重要な一役を担っています。
平成25(2013)年12月、日本人の伝統的な食文化である「和食=自然を尊重する日本人の心を表現した伝統的な社会習慣」が、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)による無形文化遺産登録を受けたことにより、和食やそのベースとなるうま味が、改めてその価値を見直され、現在国内外で注目を集めています。
ミツイシコンブ(日高昆布)は、出汁(だし)によし食べてよしの万能食財(※)。新ひだか町では昆布生産者はじめ、細かく砕いた昆布を黒毛和牛の飼料に加え、良質な和牛を生産する畜産農家や昆布関連の食品加工事業者も多くいらっしゃいます。さらに、日高昆布の出汁(だし)にこだわる飲食店など、次々に縁が紡がれています。博物館や図書館に行けばその歴史を学ぶこともでき、昆布を多面的に学べることが、今回欧州からの視察団の訪問地として選んだ理由です。
※宝である日高食材の素晴らしさを強調するため、「財」を使用しています。

-遊佐 順和(ゆさ よりかず)氏(東京都出身)
スペイン・バスク州ビルバオ市のシェフらの北海道視察全日程を2年前から計画し、中心的役割を担う。
・札幌国際大学人文学部国際教養学科文化共創コース教授
・内閣府地域活性化伝道師
・北海道社会教育委員
・北海道生涯学習審議会委員
・北海道ヘリテージ・コーディネーター
・全国「和食」連絡会議「和食」地域特派員

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