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診療所からこんにちは

10/17

奈良県下北山村

■感染症の歴史

みなさん、こんにちは。寒い日々が続き、世間ではコロナとインフルエンザの同時流行が騒がれています。2020年にコロナが流行して以降、感染症がとても身近になったと思います。コロナ以前・以後で歴史が変わったという印象すらあります。
そんなコロナが流行するずっと以前から人類は感染症と様々な歴史を繰り広げてきました。今回は人類の宿敵であり、共存者とでもいうべき感染症の歴史について紙面の許す範囲で書ければと思います。

約20万年前に人類の祖先がアフリカで誕生し、様々な経路で移動しました。移動の際には感染症の原因となる家畜・ネズミ・ダニ・ノミ・細菌などもともに移動することとなり、感染症を広げました。今も昔も感染症は人類の移動と密接な関係があると言えます。
人類は誕生以来、病に悩まされ、縄文時代の遺跡から発掘された排泄物からは寄生虫の卵が見つかり、5000年前のミイラからも感染症の痕が発見されています。
紀元前3000年頃から世界各地で文明が起こり、大都市建設と人口増加により、排泄物により伝播するコレラ、赤痢、チフスなどが流行。紀元前二世紀にはシルクロードにより世界中の交易が盛んとなり、人々の移動が広がることでさらに感染症が広がりました。その代表例として挙げられるのが、ペストと天然痘です。
「ペスト」は中世を代表する感染症でネズミやノミ等を媒介として広がります。当時は致死率が非常に高く、ヨーロッパでは黒死病という名で恐れられました。当時のヨーロッパの3~4割の人口が死亡したとも言われています。時を経た1894年に北里柴三郎がペストの病原菌を発見するまで原因は分からないままでした。
「天然痘」は、人の感染症として初めて、そして唯一、根絶ができた感染症です。その犠牲者は2〜5億人とも言われます。16世紀にスペイン人が南米へ侵攻した際に持ち込んだ天然痘でアステカ文明やインカ文明が滅び、征服されたとも言われています。世界中が天然痘に苦しむ中、1798年、イギリスのジェンナーという医師が牛の乳搾りをしている人に、「牛痘(牛がかかる天然痘)にかかった人は、天然痘にはかかりにくい」という話を聞き、牛痘にかかった人の膿を健康な人に注射して天然痘を予防するという方法を発明しました。これが最古のワクチンと言われています。
直近での最大の悲劇といえば、第一次世界大戦の戦死者よりも多かったと言われている「スペイン風邪」です。当時のインフルエンザですが、1回の流行としては最多の死者数(推定1億人)を出し、歴史を変えました。ヨーロッパの戦地へ送られた兵士がヨーロッパ全域へ広げ、終戦後に本国へ持ち帰ったため全世界に広がりました。
30億年という長い歴史を持つ微生物に人類は翻弄され続けてきたわけですが、人類も衛生環境の改善や抗生物質の改良、ワクチン開発などで対抗してきた結果、現在も人類は存続しています。現に死亡率の推移を見てみると1900年台初めは肺炎・胃腸炎・結核などの感染症が死因のトップでしたが、現在はそれらの死亡率は大幅に下がり、癌で亡くなる方が最多です。ここ100年の経過だけ見ても人類の進歩には敬服します。
現在、コロナが猛威を奮っていますが、おそらく当分収束することはないでしょう。また、温暖化に伴う生態系の変化で新たな細菌やウイルスが出現してくることが予想され、これからも感染症との戦いは永遠に続きます。ただ、これまでの人類の道のりを振り返るとコロナや新たな感染症にも対応・順応できるのではと期待しています。

下北山村診療所 根津大樹

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