
市民の皆さんの健康などに関する素朴な質問に対し、谷崎医師が「総合診療科」の観点から、分かりやすくお答えします。ぜひ、皆さんの生活にお役立てください。
伊勢総合病院 内科・総合診療科副部長 谷崎 隆太郎 医師
【質問】新型コロナワクチンを接種したのに新型コロナに感染すると聞きました。ワクチンの効果はないのでしょうか?
【回答】死亡率・後遺症発症リスクを低下させるなど、ワクチン接種の効果はあります。
■感染症ごとのワクチン効果の違い
ワクチンの効果は、私たちの体に免疫ができる仕組みから理解する必要があります。そもそも、感染症やワクチンには、持続的に免疫が維持されるものと、短期間しか免疫が維持されないものの2つに大きく分かれます。持続的なものとしては、麻疹(はしか)、風疹(ふうしん)、おたふく風邪、破傷風(はしょうふう)などです。1回かかると10~20年以上にわたり免疫が維持される感染症です。
一方で、インフルエンザや新型コロナなどは、短期間しか免疫が維持されないため、何度も感染を繰り返すことがあります。興味深いことに、それぞれの病気に対するワクチンの効果も同様です。麻疹や風疹のワクチンは適切に接種すれば長期間持続する免疫が得られますが、インフルエンザワクチンや新型コロナワクチンは接種しても感染予防効果は短期間(数カ月程度)しか得られないのです。この長期間持続するのか短期間しか持たないのかの違いは、おそらく病原体の性質による違いだと考えられますが、まだ科学的に解明されていない謎の一つです。余談ですが、これが解明されればノーベル賞級の業績ではないか、とも言われている領域です。
■新型コロナワクチン接種の意義
世界共通のデータとして、全年齢を通じて新型コロナワクチンの接種回数が増えるほど死亡率が低下することが分かっています。また、もし感染したとしてもワクチン3回接種していれば、後遺症発症リスクを約80%以上も下げると言われており、ここ最近でさまざまな効果が追加で判明してきました。効果が低下するとはいえ、数カ月間は50%程度の予防効果も維持されます。
ワクチンの効果について、さまざまな事実が分かってきた一方で、ワクチンに対するさまざまな個人的見解があることも事実です。ただ、「ワクチン接種のおかげで感染しなかった」ということが実感しづらいのに対して、「ワクチン接種しても感染してしまった」という事実は実感しやすいという違いがあることは知っておいてもいいかもしれません。
なお、従来株やデルタ株と違い、オミクロン株はワクチンを3回以上接種して初めて感染予防に有効と考えられる抗体価が得られますので、ぜひ3回以上の接種をご検討ください。
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