■第第330回 文化財編(7) 眠る木地屋資料と「越前漆器」
「越前漆器」は、古く「河和田塗」「片山椀」と呼ばれ、片山町周辺で継体(けいたい)天皇の頃に興ったという伝統工芸品です。戦国時代に一乗谷の朝倉氏とともに発展したと考えられ、江戸時代後期に輪島や京都の技法を導入したことで、福井を代表する近代産業に成長しました。
さて、木地師(きじし)のふるさと東近江市には『氏子駈(狩)帳(うじこかりちょう)』という寄進帳が残っており、19世紀に筒井八幡宮(公文所(くもんじょ))が、片山村の「椀師」から寄進を受けたことが分かっています。一方の漆器神社(片山町)には、筒井公文所が発給した免許状や木地師の祖とされる惟喬(これたか)親王の縁起書の写しが納められており、広範な木地師ネットワークが垣間見えます。
さて、「越前漆器」は時勢に応じて手工業から動力を用いた工法に代わり、大量生産が可能となりました。しかし、木地師や椀師が使用した昔ながらの道具類は次第に散逸し、古来の技法を現代に伝える資料はごくわずかとなっています。
現在、11点の「木地屋資料」が県指定文化財となっていますが、「ものづくりのまち」を支えてきた郷土の宝は、今も皆さんのおうちに眠っているのかもしれません。
文化課では漆器に関する資料調査を行っています。古い資料にお心当たりのある人は、情報をお寄せください。
(文化課 藤田彩)
◇木地屋資料
種別:県指定文化財(昭和34年9月1日指定)
所在地:片山町
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