■誰もが社会の多様性を普通と感じられるまちに
バリアフリーてけてけ隊 隊長
杉本 斉(すぎもとひとし)さん(稲荷四丁目)
長年さまざまな立場から、障害者支援を続けている杉本さん。バリアフリーてけてけ隊の活動では、障害者の外出を促し、多様な人々と接する機会を創出しています。
【ハードよりもハートから】
てけてけ隊のルーツは10年前。身体・知的・精神の障害者団体が、何か行動を起こそうと発足した「島田市障がい者福祉連絡会」でした。
「連絡会発足の2年後、車いすと盲導犬ユーザーの視点から、商店街の利便性や周辺道路の段差などを確認して巡りました。その際、外出支援者にステッカーを配布したのが『バリアフリーてけてけ隊』の始まりです。訪問した店々で「改装は難しくても、こころのバリアフリーならば簡単かもね」という言葉と行動に触れることができ、その後の商店街探検やイベントにもつながりました」
【バリアを打ち消す経験値】
杉本さんは、海外で掛けられたある言葉が、今の活動にもつながっている原点だと振り返ります。
「May I help you?障害者か健常者か以前に、言語も人種も多様な北米で、さまざまな場面で掛けてもらった言葉です。日本ほど施設のバリアフリー化が進んでいないからこそ、ボランティアだけでなく出来る人が出来ることをする精神が、行き渡っている文化だと実感しました。『何かお手伝いできることはありますか?』の言葉は、助け合いほど仰々しいものではなく、心遣い。日本でも肩肘張らない声掛けが日常になれば、多くのバリアを打ち消すことができるはずです。当事者に必要なサポートは、人ぞれぞれ。何に配慮すべきなのかは、聞いてみなければ分かりません。だから、必要なのは接する機会、経験値なんです」
【多様と配慮が普通のまち】
「てけてけ隊には、多くの子どもや学生ボランティアが参加してくれています。障害者と触れ合う中で、世の中にはいろいろな人がいて生き方があること、その『いろいろ』が一緒に暮らす社会こそが普通なのだと感じてもらえたら、こころのバリアフリー化ですよね。当事者が外出することで、周囲はそのニーズを知ることができます。体験することで気付きが生まれ、配慮につながる。それは健常者にとっても、例えば高齢になった時に必要な、暮らしの安全安心なんです。地域のために何が必要か、他者の立場で考えを深めていくことは、まさにまちづくり。簡単ではないけれど、てけてけ歩みますよ。やり続けなければ、次につながらないですからね」
みんなから、父親のように慕われている杉本さん。そのゴツゴツした優しい手は、いつも子どもたちを分け隔てなく包み込んでいます。
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