子育て 《連載》家庭教育シリーズ 第360回

◆心の安全基地
上富良野中学校長 金山 達也
私は3人兄弟です。小学生の頃は、自分だけの部屋はなく、弟と1つの部屋で過ごしていました。段ボールで自分だけのスペースを作って遊んでいた記憶があります。また、幼少期には気に入ったタオルがあり、夜は必ずそばにおき、ぼろぼろになるまで使っていたそうです。ほっとできる空間や時間がほしかったのかもしれません。
今、子どもたちは目まぐるしく変わる環境を懸命に生きています。その中でも中学校の3年間は短い期間のなかで、多くのことを学び、失敗を繰り返しながら、大きく成長する時期でもあります。その反動なのかもしれませんが、子どもたちの中には身体と心の成長が伴わず、心身のバランスを崩してしまうことが昔よりも増えてきていることが課題となっています。そのような状況であるからこそ、のんびりできる時間やほっとできる空間が今まさに必要とされています。自立に向かう中で、どうしても不安定になってしまう時期を乗り越えるための、「心の安全基地」が求められています。私は、学校がその役割を少しでも担うことができれば、子どもたちにとって安心できる場所になり、さらには、保護者の皆さまのご負担も軽減できるのかもしれないという思いでおります。ただ幸いなことに、上富良野町には、そうした環境としての安全基地(Mina Mina)が存在しています。進む先が見えなくなったり、不安のために一歩さえ歩みだすことが難しくなったりした時は、子どもたちもそうですが、私たち大人もほっとできる空間を求めてもよいと思っております。前に進むためのエネルギーを貯められる場所と時間が今、さまざまな人にとって必要な時代となっています。