文化 常陸大宮 市史 編さんだより vol.93

◆特別天然記念物「ニホンカモシカ」-常陸大宮市に出現-
自然部会部会長 茨城生物の会 会長 桐原 幸一

『常陸大宮市史 別編2自然 〔動植物〕』が2022年に発刊され、その「哺乳類」の項で、ニホンザル(2019)、ニホンジカ(2019)の目撃情報があったことを記載しました。その後、特別天然記念物ニホンカモシカの目撃情報が寄せられたので、記載し、お知らせします。
昨年(2024)の11月6日に、諸沢の小林久様から「常陸大宮市下檜沢の森林組合に勤める波多野雄亮氏が、ニホンカモシカを目撃し、写真に撮った」との情報が寄せられました。早速、森林組合を訪れ、波多野様からその時の様子を伺い、写真をお借りしました。茨城県産野生哺乳類目録(2015)や茨城県版レッドデータブック(2016)によれば、ニホンカモシカは、茨城県において、一時その生息が確認できなかった種ですが、最近、八溝山地および阿武隈山地等で目撃情報が寄せられていることなどから、定着の可能性が指摘されています。
今回撮影された写真は、ニホンカモシカの野生での姿を、正面からはっきり捉えた写真としては初めてのものであり、大変貴重なものです。また、常陸大宮市では初記録となります。
ニホンカモシカは、肩高は70cm前後で、やや長めの体毛を持ち、体毛の色は灰褐色、茶褐色とさまざまで、オスもメスも短い角をもっており、ウシ科に分類されています。また、オスとメスとを見分けられるような外見上の区別(性差)がありません。子育て中のメス以外は単独で行動します。落葉広葉樹の生育する森林に棲み、さまざまな植物を食べ、やや開けた、見晴らしの良い場所に休んでいるところを発見されることが多いようです。また、好奇心が強く、人を見かけても、この写真のように逃げようとはしないようです。
県北地方では、ほぼ同じ時期に、ニホンジカ、ツキノワグマ等が度々目撃されています。こうした、従来、茨城県内に生息もしくは侵入していなかった生物、特に野生生物が新たに入ってくることによって、その野生生物に寄生していた病害虫等が侵入してくるおそれがあります。
先日、友人が他県の観光地で沢に入ったところ、ヤマビルに吸血され驚いた、との話を聞きました。ヤマビルも私の幼少期には、茨城県ではあまり警戒する必要が無かった記憶がありますが、ニホンジカが侵入してきた現在、ヤマビルの侵入にも十分気をつけなければならないと思います。
また、大子町ではツキノワグマの目撃もあり、新聞報道もされています。私たちも、調査等で山野に入る際には被害に遭わないよう、お互いに十分注意しています。どうか皆さんも、新たな野生種の目撃情報にも十分気をつけ、併せて新たな病害虫等の被害にも留意され、自然を楽しんでいただきたいと思います。
なお、茨城県生物多様性センターでは、ニホンカモシカが県北地域で相次いで目撃されているとして、ホームページで「特別天然記念物『ニホンカモシカ』の錯誤捕獲防止」を呼びかけています。
もし、山野でニホンカモシカに出会った際は、驚かさないよう、見守ってください。

茨城県生物多様性センターホームページ
「特別天然記念物『ニホンカモシカ』の錯誤捕獲防止」
※二次元コードは本紙をご覧ください。

問い合わせ:文化スポーツ課 文化振興グループ
【電話】52-1111(内線343)