- 発行日 :
- 自治体名 : 長野県伊那市
- 広報紙名 : 市報いな 令和7年12月号
発行:伊那市農業委員会
■春富土地改と小水力発電
委員 三浦 勝
私の担当地区の富県「貝沼、桜井」地区は伊那市の中央を流れる天竜川の左岸と南アルプスの仙丈ケ岳に源を発する三峰川の左岸の段丘地帯で水に恵まれた肥沃な水田地帯を有する地区です。
伊那市春富土地改良区(以下、「春富土地改」と言う。)の歴史はいつの時代か詳らかではありませんが、貝沼、桜井の用水を満たすために、一五六二年(永禄五年)新山川から井筋の開削がされ、一六五五年(明暦元年)佐久の柳沢弥左衛門による三峰川からの取り入れ井筋の開削。一八三二年(天保三年)伊東伝兵衛による大改修がなされ、現在の春富一号幹線水路「通称、伝兵衛井筋」となりました。昭和十二年に春富耕地整理組合が組織され組合の経営となり、更に伊那市政施行後、春富土地改の管理となりました。
昭和三十三年「三峰川総合開発事業」の一連として洪水調整目的の美和ダムと多目的用途の高遠ダムが建設され水害克服、水利の安全・供給を目的とした春富発電隧道が開削され新山川に放流。新山川頭首工(ファブリダム)より取水し、春富一号から六号及び、上井幹線を経て富県・東春近地域809.5ヘクタールをかんがいし、生活環境用水として確保され、幹線水路23km、準幹線水路47kmを管理しています。
春富土地改が管理する左岸六号幹線水路が築造五十年以上を経て老朽化が著しいことから平成二十六年から「県営かんがい排水事業春富六号地区」の改修事業に着手。本事業では、農村資源の有効活用、農業水利施設の維持管理費軽減に寄与する観点から、小水力発電施設導入を決定し、平成二十九年[春富小水力発電所]が竣工しました。
この発電所は一級河川新山川より取水し、一号幹線水路にある桜井分水工(階段落差工)という落差構造を活用した水力発電所です。有効落差21.94メートル、発電出力197キロワットアワーの能力を有し今年で稼働9年となります。
発電所運用期間は、毎年四月から九月までの六か月間。年間平均発電量は62万〜65万キロワットアワー、発電による売電益は、春富土地改が管理する農業水利施設等の維持管理のほか、農業水利施設及び小水力発電施設保全、改修のための積立へ活用しています。
稲は一生の間に10アールあたり400トン。夏の暑い日だと一日6.5トンの水を吸い上げるそうです。(所説あり)この量は稲が吸い上げる水の量で、育苗や代かきに使用する水を含めると、必要な水の量はさらに多くなると言われています。世界平均の二倍の降水量で水資源に恵まれた日本。そして水田は日本の気候風土に適した持続可能な穀物生産装置と言われているそうです。
私たちの住む伊那の地は、まさに持続可能な穀倉地帯ではないでしょうか。例えば身近に整備された水路があり水が流れている。そんな自然と人智が調和した環境を大切にしていきたいですね。
最後に[春富小水力発電所]の場所をご案内します。「春高駅伝」で選手が走るナイスロードを伊那から高遠へ向かっていくと上伊那クリーンセンター手前、右側山面に落差工水圧鉄管が見えます。ここが小水力発電所になります。また、三峰川河川公園ジョギングコース左岸コースの2.5km過ぎ、右手に間近に見えます。近くに行く機会がありましたら、是非ご覧になってください。
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