健康 メディカルニュース

桑名市総合医療センター
精神科
郷治洋子(ごうじひろこ)さん

今月のテーマ:せん妄(もう)について

せん妄は、典型的には、ある時から急に普段と異なる様子で興奮したり、つじつまの合わない話をしたり、日時や場所が分からなくなるといった症状をきたします。高齢者や認知症の人に発症しやすく、身体の病気の悪化や手術の後、住み慣れた場所からの環境変化、また睡眠薬などある種の薬もせん妄を引き起こす原因となります。ですから高齢者が身体の病気で入院した際にしばしば発症します。症状が強いと動き回り転倒する、点滴を抜いてしまうなど、本来の病気の治療に支障をきたしてしまいます。
せん妄は脳の一時的な機能障害です。意識が障害されるため記憶が曖昧であることが多く、一見認知症が進行したようにも見えますが、認知症との大きな違いは症状が一日の中でも変動し、特に夜間に多いことや日の単位で症状が変化する点です。

せん妄の治療には薬による治療と薬以外の治療があります。薬以外の治療としては、生活リズムを整えること、例えば日中はカーテンを開けて日光を浴び起きて過ごすこと、また身近な人の来訪や日時の手がかりとなる時計やカレンダーを部屋に置くことも有効です。
この対応で症状が改善しない場合は薬の治療を検討します。薬の治療は本来統合失調症の治療薬である抗精神病薬を使用します。財布を盗まれるといった妄想やいないはずの人が見えるといった幻覚、攻撃、興奮などの問題行動に対して有効であることが知られています。一方でふらつきによる転倒や誤ごえん嚥性肺炎などの危険性もあり、必要最小限となるよう薬の種類や量にも注意を払いながら、症状をよく観察し薬の使用を検討します。

問合せ:総合医療センター
【電話】22-1211【FAX】22-9498