文化 シリーズ「木津川市の文化財を巡る」第88回

■石造笠塔婆(せきぞうかさとうば) 西明寺(加茂町大野)
笠塔婆は供養(くよう)塔の一種で、塔身(とうしん)(塔の本体部分)の上に笠の形の屋根石(やねいし)を載せた形状のものです。鎌倉時代に盛んに建てられたことが知られており、木製のものもありましたが、現存する多くは石造です。
西明寺の本堂横に立つ笠塔婆は、花崗岩(かこうがん)製で、高さ1m47cmに幅が94cmという幅広の塔身に、高さ27cm、幅99cmの寄棟風(よせむねふう)に作られた笠石(かさいし)が載せられています。塔身正面に薬師如来像(やくしにょらい)と銘文(めいぶん)、側面にも銘文が刻まれていて、「西明寺八講田(はっこうでん)」などの田の名や、永仁(えいにん)3年(1295)の年号、橘友安(たちばなのともやす)という石工(いしく)の名前があります。中世に活躍した石工集団として「橘」姓を名乗る一派の存在が知られており、市内にも複数の作例が確認されています。この笠塔婆は、造られた年代や作者がわかるだけでなく、西明寺において本尊の薬師如来を表すという由来も明らかな基準作として存在意義が大きいことから、令和6年に市指定文化財となりました。

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