- 発行日 :
- 自治体名 : 佐賀県唐津市
- 広報紙名 : 市報からつ 令和7年12月号(Vol.251)
今年大阪で開催された万国博覧会。10月の閉幕も記憶に新しいかと思います。
明治時代に「博覧会男」と言われた人物がいたことをご存じでしょうか。パリ万博〔慶応3(1867)年〕、ウィーン万博〔明治6(1873)年〕と二度の万博に代表として参加し、国内勧業博覧会の開催も主導した彼の名は、佐賀県七賢人の一人「佐野常民(さのつねたみ)」です。
佐野常民は日本初の実用蒸気船の建造、明治政府では海軍の創設に尽力、そして先にも上げた博覧会への貢献など、その活躍は多岐に渡ります。その中でも広く知られている功績といえば「日本赤十字社の創設者」であることでしょう。
常民は9歳の時に藩医佐野家の養子になり、医学の知識、そして人命尊重の精神、人道の教えを学んでいきます。
その後、佐賀藩に出仕した常民は派遣員としてパリ万博へ。佐賀の特産品の売り込みと最先端の技術を学ぶ目的でしたが、そこで国際赤十字のパビリオンを目にします。当時の日本では考えられなかった「敵味方関係なく救護活動を行う」その活動や仕組みに衝撃を受けました。これが常民と赤十字との出会いです。そして明治10(1877)年「西南戦争」が勃発。常民は日々報道される戦地の惨状に胸を痛めます。若き日に学んだ医学者の論理、人道の教え。万博で目にした国際赤十字の取り組み。培われた博愛の精神が常民を突き動かし、敵味方関係なく救護活動を行う組織、日本赤十字社の前身となる「博愛社」を立ち上げたのです。
佐野常民は「博愛これを仁という、仁とは人を慈しむこと」という言葉を残しています。
相手に寄り添い、思いやる心の大切さを示した言葉です。
「人権の世紀」と言われる21世紀ですが、世界各地で紛争が絶えず、またインターネット上では誹謗中傷や差別を助長する投稿があふれています。常民の言葉は現代社会においても、いえ現代だからこそ大切にすべきではないでしょうか。
日本では昭和23(1948年12月10日に国連で世界人権宣言が採択されたことを記念し、12月4日~10日を「人権週間」と定めています。
佐賀県では、同和問題、女性の人権、子どもの人権、高齢者の人権、障がい者の人権、その他さまざまな人権問題の解決に取り組んでいます。
どの人権問題に対しても常民の「博愛の精神」が解決の糸口になるものではないでしょうか。人の痛みに寄り添い、慈しみあう心を私たちも大切に引き継いでいきたいものです。
問合せ:生涯学習文化財課
【電話】72-9159
