今年3月に環境省から「自然共生サイト」に認定された「自然学習園ふるさとの森」。ここは、開発などによって失われていく郷土の自然を再現し、自然の豊かさと大切さを後世に伝えていくことを目的につくられました。
今月号は、ふるさとの森と自然学習への活用事例について紹介します。
「自然学習園ふるさとの森」
藤原町市場493-1
《自然みっけ隊(自然学習室)》
▽いなべの自然をぎゅっと集めた場所
隊長 矢﨑充彦
隊員 坪井諒介
ふるさとの森は、約1ヘクタールの敷地に4つのエリアがあります。その内の1つ「ロックガーデン」は、藤原岳の石灰岩地形を再現し、まるで山頂にいるような自然の雰囲気を感じられます。高所でないと出会えない生き物も、ここで気軽に観察することができますよ。
また、ふるさとの森は季節ごとに大きく姿を変えます。春には早春植物が咲き、夏には多くの昆虫が見られ、秋には落葉樹が紅葉し、冬には野鳥が訪れる―。そんな自然のサイクルを感じられるのが、ふるさとの森の魅力です。
〈いなべ10のコーナー「いなべの自然みっけ隊」〉
市の情報番組「いなべ10」で月1回放送中のコーナー。自然みっけ隊が、ふるさとの森を中心に動植物の生態などを紹介しています。
「毎回驚きがいっぱい!」
・過去の放送分は動画集から見ることができます(本誌2ページにQRコードを掲載しています)
(1)ロックガーデン
藤原岳の石灰岩地帯を再現。石灰岩を好む日本固有種のセツブンソウや藤原岳に生育する植物が見られます
(2)シデ・モミジ
林藤原岳の標高700m前後をイメージした落葉広葉樹林。シデやカエデの仲間から構成され、秋の紅葉がきれいです
(3)シイ・カシ林
神社などで見られる常緑広葉樹林。一年を通じて日光があまり入らないので、他エリアと比較して地面の草花がまばらなのが特徴
(4)コナラ林
コナラを中心にした雑木林。薪炭を作るための「薪炭林」と呼ばれ、かつては生活に欠かせない存在でした
▽自然共生サイトに認定された場所
環境省 九州地方環境事務所 自然環境調整専門官 小林悟志さん
自然共生サイトは、地球温暖化や生物多様性の減少に対応するため、自然環境や生物多様性の保全が図られている場所です。2030年までに国の土地の30%以上を自然保護エリアにする「30by30」という国際目標があり、日本でも民間の土地を活用して自然共生サイトとして認定する取り組みが進んでいます。
ふるさとの森が自然共生サイトに認定された理由の一つは、移植された植物だけでなく、希少種が存在していることでした。また、通常は枯れてしまう高山植物や石灰岩植物が、この森ではしっかりと生育している点も注目されました。ここでは、どんぐり、照葉樹、落葉樹や高山植物を一度に見ることができるので、野外学習の森としても高く評価されています。
▽森の職人 佐藤の植生へのこだわり
自然学習室 佐藤俊介
ふるさとの森では、いなべ市の自然を保護するために、特に植生の保護に重点を置いています。ここは単に昆虫採集を行う場所ではなく、自然のままの植生を観察し、学べる場所として整備しています。ですが、何も手を入れず放置すると、やはり荒れてしまうのも事実。毎日巡回し、気候に合わせて水やりなどを行うことで、自然を保護しつつ、見応えのある景観を作り出しています。
特に気を使うのは草抜きの作業。植物の知識がないと、どれが残すべき草花かどうかの判断がつきません。そのため外部に任せずに、私たち職員が一つ一つ手作業で行っています。大変な作業ですが、藤原岳に昔あったイブキザサなどの貴重な植物の生育場所にもなっているので気は抜けませんね。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>