伊勢市は、令和5年3月に内閣総理大臣からワイン特区の認定を受けました。
特区を活用すると、ワイン醸造の初期投資費用が大幅に削減でき、小規模事業者でも参入しやすくなります。これにより、耕作放棄地の利用展開や、ぶどう農家の誕生が期待できます。
今号では、伊勢市でワイン造りに携わる人たちをご紹介します。
■ワイン特区とは?
酒類製造免許を受けるためには、通常は年間最低6,000リットルの製造を見込む必要があります。特区に認定されることで、その基準が年間2,000リットルに緩和されます。
○年間6,000リットル 8,000本 1本750ml
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○年間2,000リットル 2,666本 1本750ml
ワイン特区における製造量の見込み数量イメージ
■古代エジプトの壁画にワイン?
ワインは、主にぶどうの果汁を発酵させたもので、古代エジプトの壁画には、ぶどう栽培や醸造の様子が描かれているほど極めて歴史の古いお酒です。国産ワインの歴史は諸外国に比べて浅く、今から約150年前、明治時代の初期にワイン造りが始まりました。現在、お酒は主に3つに分類され、ワインはビールや日本酒とともに「醸造酒」に該当します。
■ワインの造り方(一例)
▼赤ワイン
黒ブドウを皮ごと使用。果皮の色が抽出され赤く色付きます。
○収穫
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○除梗
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○発酵
酵母を加え、皮や種ごと発酵させます。
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○圧搾
発酵したぶどうを皮ごとつぶし、果汁を絞り出します。
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○熟成
樽やタンクなどで貯蔵し熟成させます。
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○赤ワイン完成!
▼白ワイン
皮を取り除き、果実のみを使用。色は透明になります。
○収穫
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○除梗
収穫したぶどうの枝から実を外し、ワイン造りに適した状態にしています。
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○圧搾
発酵させる前に、果汁を絞り出します。
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○発酵
酵母を加え、発酵させます。
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○熟成
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白ワイン完成!
伊勢市の景色を想像しながら「伊勢ワイン」を楽しんでほしい。
■日本ワイン
ぶどうの産地や品種、年号が表示できます国内で造られるワインの中でも、国産ぶどうを100%使い醸造されたものを「日本ワイン」と言います。日本ワインのラベルには、ぶどう産地や品種、年号が表示できます。伊勢市内で収穫したぶどうを85%以上使ったワインには、「日本ワイン」と「伊勢」の両方を表示できます。伊勢市の魅力を発信する特産品として、高品質な伊勢産ワインに期待しています。
※国内製造ワインでも海外原料を使用したワインには地名・ぶどうの品種名・ぶどうの収穫年を表示することができません。
〔詳細は本紙またはPDF版をご覧ください〕
■特区を活用して
念願の伊勢産ワイン醸造に挑戦
伊勢ワイン株式会社 代表取締役 岩崎 直明さん
伊勢市出身。高齢者や児童へのデイサービスを県内で運営。ワイン醸造を行う就労支援施設『ジョブスタジオ伊勢』ではワイン農場も運営し、伊勢市の農福観光連携と障がい者の支援を行っています。
▼インタビュー
「ゆめ」に満ちあふれる仕事場を
○障がいのある人たちがいきいきと働ける場所
これまで、障がい児童のリハビリや能力開発に携わってきました。
子どもたちは、18歳まで児童福祉施設で支援を受けられますが、それ以降は社会に出ていきます。
しかし、さまざまな仕事に就ける機会は限定的だと感じており、「教え子がいきいきと活動できる仕事場をつくりたい」と思っていました。
あるとき、施設を利用する教え子が力加減できずにおやつを握りつぶしてしまうところを見て、ぶどうをつぶすワイン造りであればこの子と一緒に働けるのではないかと考え、ぶどうの栽培に取り組み始めました。
○農業経験ゼロからワインぶどうの栽培へ
障がい児童の将来の働く場所を創出するために耕作放棄地を借り、手作りハウスを作りました。
農業を始めて6年がたちますが、そのうち5年間は試行錯誤の連続でした。幸い、農業未経験の私たちを気にかけてくださった地元農家の人からご指導していただき、今では御薗町高向で耕作放棄地の活用を含め約1ヘクタールのワインぶどう畑を手掛けています。一定の収穫が見込めるようになり、伊勢市にワイン特区申請を提案させていただきました。
○醸造免許を取得伊勢産ワイン醸造に挑戦
特区を活用して令和5年10月に醸造免許を取得しました。
自社での醸造は初めてですが、いくつかのワイナリーからご指導を受け、ワインの品質を上げるために研究を重ねています。全てを機械作業にせず、手作業で行うことで障がいのある人たちの活躍の場をつくり、その結果おいしいワインができる。私の一番の願いです。
今後、私たちのワインが市内外で消費され観光産業を支えることで、障がいのある人たちが、誇りを持ってより良い条件で働くことができるようにしていきたいです。
問い合わせ:農林水産課
【電話】21-5645【FAX】21-5651
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