市民の皆さんの健康などに関する素朴な質問に対し、谷崎医師が「総合診療科」の観点から、分かりやすくお答えします。ぜひ、皆さんの生活にお役立てください。
伊勢総合病院 内科・総合診療科副部長 谷崎 隆太郎 医師
質問:インフルエンザワクチンを打ってもインフルエンザになったのですが、接種する意味はあるのでしょうか?
回答:さまざまな点から、接種するメリットはあります。
■インフルエンザとは
インフルエンザは主に冬に流行する気道感染症で、皆さんの中にもかかったことがある人は多いかと思います。インフルエンザは自然に治癒(ちゆ)する病気ですが、免疫不全状態の人や持病がある人などは重症化するリスクがあるため、そのような人にはオセルタミビルという抗インフルエンザ薬が使用されることがあります。
とはいえ、そもそも予防できれば良いと考えるのが人間であり、インフルエンザの予防には日頃からの手洗いやマスク、そして事前のワクチン接種があります。
■個人へのインフルエンザワクチンの効果
ところがこのインフルエンザワクチン、流行したウイルスの型によっても効果のばらつきはありますが、個人の発症を予防する効果だけ見れば、子どもから高齢者までを通じて40~50%程度しかありません。つまり、インフルエンザワクチンを接種したからといって、全員がインフルエンザを防ぐことはできないのです。
ただし、65歳以上の高齢者や持病がある人に対しては入院や死亡を減らす効果も示されていますので、これらに該当する人が接種するメリットは大きいといえます。全く持病も何もない若い人を含めた研究でも、インフルエンザワクチン接種により休職日数が減ったり、病院への通院日数が減ったりと、それなりに現実的なメリットも示されています。
■集団へのインフルエンザワクチンの効果
なお、個人ではなく集団におけるインフルエンザワクチンの接種率が上がると、さまざまな効果があると報告されています。
例えば、子どものインフルエンザワクチン接種率が上がると高齢者の肺炎による死亡が減ったり、学級閉鎖の平均日数が短縮されたりと、個人だけでは見えにくい社会全体への影響も多数報告されています。
■ワクチン接種の検討を
原則、ワクチンを接種するかどうかは個人の判断と価値観に委ねられます。このような科学的な研究結果も知った上で、接種するかどうか検討してみるとよいでしょう。
過去の「広報いせ」掲載分は、市のホームページでいつでもご覧になれます。
「健康なんでも相談室 伊勢市」で検索
※高齢者インフルエンザ予防接種に関する記事は、17ページに掲載しています。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>