市民の皆さんの健康などに関する素朴な質問に対し、谷崎医師が「総合診療科」の観点から、分かりやすくお答えします。ぜひ、皆さんの生活にお役立てください。
伊勢総合病院
内科・総合診療科副部長 谷崎 隆太郎 医師
質問:認知症予防にできることはありますか?
回答:たくさんあります。できることから始めてみましょう。
■増えている「認知症」
2024(令和6)年現在、日本における65歳以上の5人に1人は認知症といわれる世の中であり、今後も認知症の人は増え続けることが予測されています*1。
認知症の中には、内科の病気が隠れていて、それを治療することで治る認知症もわずかながらあります。しかし、残念ながら大半の認知症は、一度発症したら改善が難しい認知症(アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症など)であり、だからこそ発症しないよう予防が重要視されています。
■認知症が発症する要因
日本だけでなく世界中で認知症は問題となっており、さまざまな研究が進められています。2020年に英国ランセット誌に掲載された研究では、認知症が発症するリスクとして、短い教育歴・難聴・頭の外傷・高血圧・一定量以上の飲酒・肥満・喫煙・うつ病・社会的孤立・運動不足・大気汚染・糖尿病の12個の要因が挙げられています*2。これらがすべて均等に認知症の発症リスクにつながるわけではなく、65歳以降の認知症で特に関連するのは、タバコとうつ病、社会的孤立、運動不足でした。
■できることから、認知症を予防しましょう!
これらの要因の中には、社会的孤立の解消など個人の力で解決が難しい問題もあるかもしれませんが、まず個人ができることとして、たばこを吸っていれば禁煙し、お酒はほどほどに(「広報いせ」令和6年4月1日号・26ページ[アルコールを飲む前に~]参照)、運動不足を解消しつつ、難聴があれば積極的に補聴器などで聴力を維持し、頭を怪我(けが)しないよう普段から気を付ける。これだけでも12個のうち5個の対策が済みました。そして、高血圧や糖尿病、うつ病などの持病がある人は、それぞれのかかりつけの先生にしっかり治療を継続していただくとして、それ以外のことのうち、自分でできることを日々の生活の中で意識してみましょう。
*1.内閣官房ホームページ 認知症施策推進関係者会議(第2回)議事次第
*2.Lancet 2020;396(10248):413-446.
過去の「広報いせ」掲載分は、市のホームページでいつでもご覧になれます。
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※谷崎医師が講演する「脳卒中・認知症市民公開講座」の開催記事を、17ページに掲載しています。ぜひお越しください。
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