市民の皆さんの健康などに関する素朴な質問に対し、谷崎医師が「総合診療科」の観点から、分かりやすくお答えします。ぜひ、皆さんの生活にお役立てください。
伊勢総合病院 内科・総合診療科副部長 谷崎 隆太郎 医師
質問:イライラした時はカルシウムを取った方がよいのでしょうか??
回答:いいえ、カルシウムではなく、むしろ鉄です。
カルシウムの役割とは?
皆さんは、「そんなにイライラするなんてカルシウム足りないんじゃないの?」と言ったり、言われたりしたことがありますか?そして、カルシウムを取ったらイライラしなくなった経験はありますか?
血液中のカルシウムがもつ機能の一つに、脳や筋肉に信号を送る神経の働きを助ける作用があります。しかし、実はカルシウムが不足したからといってそれがイライラの原因にはならないのです。「脳に信号を送るカルシウムが減ったら何かしら影響があるのでは?」と思うかもしれませんが、私たちの体内ではカルシウムの99%は骨と歯に含まれており、もし血液中のカルシウムが少なくなっても、直ちに骨からカルシウムが溶け出して補充されるため、そもそも滅多なことでは血液中のカルシウムは低下しないのです。
一方で、不足するとイライラする栄養素は、実際に存在します。それは…そう、「鉄」です。
「鉄」が不足すると…
人間は生きるために酸素が必要不可欠ですが、体内で酸素の運搬や貯蓄に関わる重要な栄養素こそが鉄なのです。この鉄が不足すると、体の隅々の細胞の酸素が不足することで、さまざまな不都合な症状が現れます。鉄不足の症状でよく知られているのは、運動時に疲れやすかったり、日常生活でも息切れをしたりと肉体的な悪影響の方だと思いますが、実は、鉄が不足すると肉体的な悪影響だけでなく、精神的な悪影響も現れることが分かっています。
人間がリラックスして落ち着くためにはセロトニンという脳内物質が必要ですが、このセロトニンが体内で産生される過程で、鉄を必要とします。すなわち、鉄が足りないとセロトニンが不足して、イライラや抑うつ・パニック発作の原因またはその悪化などにつながります。鉄不足が子どもたちの学習力の低下と関連していたという研究もあります。
食生活を見直そう
というわけで、何だか最近疲れやすいという人はもちろんのこと、何だか最近イライラしやすい、落ち込みやすいといった人は、今一度食生活を見直して鉄分の摂取を心がけてみてください。食品だけでなく、サプリメントなどで補充しても大丈夫ですよ。
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