市民の皆さんの健康などに関する素朴な質問に対し、谷崎医師が「総合診療科」の観点から、分かりやすくお答えします。ぜひ、皆さんの生活にお役立てください。
伊勢総合病院 内科・総合診療科副部長
谷崎 隆太郎 医師
■9月10日(火)~16日(祝)は「自殺予防週間」です。
谷崎先生に「こころの健康」について聞いてみました‼
◇そもそも「健康」って?
健康とはどういった状態のことを言うか、ご存知でしょうか?世界保健機関(WHO)は、「健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」と定義しています。単に肉体的に元気であれば健康である、というわけではないのです。
◇こころの健康を損なうと…
精神疾患が悪化すると、日常生活が送れなくなったり、社会活動が制限されたり、最悪の場合は自殺にまで追い込まれることがあります。日本では、生活を障害する精神疾患の中で一番多いのがうつ病で、次に不安障害、統合失調症、双極性障害と続きます。また、精神疾患は10代〜40代までの男女で発症することが多く、これからの日本を担う人たちを直撃しています。それもあってか、令和4年度から高等学校学習指導要領でも、精神疾患の予防と回復についての内容を取り扱うことになりました。
また、精神疾患によって休職・休業することによる社会的損失や、通院・入院のための費用なども莫大(ばくだい)です。2008年のデータでは、うつ病性障害によって起こる社会的コストが年間約3兆円にも上ると試算されています。
このように精神疾患は本人だけでなく、社会的にも多大な影響を与えます。よって早期発見・早期治療、および適切な介入が重要なことは言うまでもありません。
◇一人一人違う「許容量」
「精神疾患は心が弱い人の病気だ」「わがままを言っているだけ」「私はそれくらいのことで精神をやられたりしない」といった偏見が根強く残っており、そのせいで精神疾患に対する正しい理解が進まないという現実もあります。
人によって走れる距離や持てる荷物の重さが違うように、自分が抱えられる精神的ストレスの量は人それぞれ異なります。自分の容量を超えた精神的負荷を受けた時、人は精神的ストレスを感じ、それが続くことで心身の調子を崩します。すなわち、この耐えられる容量と負荷とのバランスが崩れれば、誰しもが精神を病むのです。そう、たとえそれがどんなに屈強(くっきょう)な見た目をしたアスリートであってもです。
◇「つらい」と感じたら相談・受診を
一方で、肉体的なダメージと違って精神的なダメージは他人から見えにくく、つい過小評価されがちです。他人がどう思うかではなく、自分が本当につらいと思ったならば、まずは信頼できる人に相談し、必要に応じて精神科や心療内科の受診を検討しましょう。
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※こころの健康づくりに関する記事を、19ページに掲載しています。
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