■冬の味覚「ひのな漬け」
漬物は伊賀でよく食べられている保存食で、種類も豊富です。その中でも「ひのな漬け」は冬の時期に作られ、親しまれている漬物です。
ひのなはかぶらの一種で、太さは親指程度です。見た目の鮮やかな緋色から「緋之菜」とも、発祥の地である滋賀県蒲生郡日野町から取って「日野菜」とも書かれます。秋頃に収穫され、漬物に加工されます。10本程まとめて束にしてからきれいに洗い、風通しと日当たりの良い庭先に2、3日干し、しなやかになったものを米ぬかや塩と共に漬けておきます。一カ月ほど漬け込んで完成です。
これとは別に、長期間漬け込まずに食べるものもあります。その場合は葉と共に細かい輪切りにし、塩でもんだ後に熱湯をかけてから流水で洗う工程を繰り返したものにすりごまなどを混ぜ、酢、砂糖、しょうゆで数日漬けます。酢の量やちりめんじゃこを加えるなど、それぞれで少しずつ異なる家庭の味になります。
かつては東柘植村や河合村、小田村など、伊賀地域の各村で大きなたるにたくさん漬けられており、昭和の初め頃には地域の女性らが総出で漬け込む作業を行っていました。できあがったひのな漬けは、大阪や京都、名古屋などの周辺都市に出荷され、村の貴重な収入源となっていました。
写真は昭和初期に行われたひのな漬けの様子です。中央に写る札には「長田村三軒家婦人会日之菜漬作業」と書かれています。大量のひのなが束になっており、たるに詰め込んでいく様子が写っています。村総出の行事だったことがうかがえます。
問合せ:文化財課歴史資料係
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