■県指定有形文化財(彫刻) 寺田の石造地蔵菩薩坐像(ざぞう)群
寺田の石造地蔵菩薩坐像群は、寺田地区の3カ所に点在する石仏です。石仏とは石材に彫刻を施した仏像で、自然の岩肌を活かし、直接彫り込んだ磨崖仏(まがいぶつ)などがあります。寺の境内や墓地の入口、山の岩肌や道端などで目にすることができる身近な仏像です。
桐之木谷地蔵坐像磨崖仏((1))は、大光寺本堂から、さらに山中に入った南西の斜面に埋もれた大きな花崗岩(かこうがん)の下方にあり、龕(がん)と呼ばれる仏像を納める縦長のくぼみを彫り込み、その中に、右手には悪を退散させるといわれる錫杖(しゃくじょう)を、左手にはあらゆる願いを叶えてくれる宝珠(ほうじゅ)という玉を持ち、4重の台座(蓮華座(れんげざ))に座った地蔵菩薩坐像が1躯く刻まれています。室町時代初期のものと考えられています。
寺田の集落の中にある1基((2))は、「坂の地蔵さん」として地元で崇敬されており、地蔵堂に安置されています。高さ・幅とも約100cm、奥行き35cmの方形の花崗岩に同じような形態で、1躯の地蔵菩薩坐像が刻まれています。鎌倉時代後期頃のものです。
大光寺参道の中腹に所在する1基((3))は、「北向三体地蔵」や「岡山の石仏」とも呼ばれており、高さ145cm、幅340cm、奥行き約280cmの花崗岩の自然石に、ほぼ同形の3躯の地蔵菩薩坐像が刻まれています。こちらも同じ形態で制作されていますが、非常に立体的で彫りが深く、丁寧に作られた仏像であり、伊賀では最高の出来とされます。台座の意匠などから、南北朝時代のものと考えられています。
これら3基の石造地蔵菩薩坐像は、いずれも立体的かつ丁寧な表現が見られ、14世紀代の特徴をよく表した優品であり、これらが寺田地区に集中していることは、石工が地域に定着し、石仏の制作技術や形態が世代を超えて継承されていたことを示しています。
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