認知症の人やその家族をはじめ、社会の中で孤立しがちな人が集い、つながりを感じられる居場所づくりが求められています。
■ようこそ、認知症カフェへ
◇和やかな雰囲気の会場
認知症について知りたい、学びたい、考えたい、認知症になっても安心して暮らしたい。そんな人たちが集える場として「認知症カフェ」が、市内8カ所で運営されています。
9月に開催された名張地区の認知症カフェ「みかんの木」には、近隣の高齢者や民生委員児童委員など約30人が参加。複雑に重ねられた文字を解読したり、指の動きを左右の手で変えたり。「みんなで楽しく脳トレできてよかった」。会場からは、そんな声が聞かれました。
「みかんの木」のスタートから2年。「近所の人などを誘ってくれる人も多く、参加者も増えてきました」。そう話すのは、まちの保健室の勝村職員。福祉の専門職や地域の人同士がつながる機会にもなっています。
◇見えてきた課題
「みかんの木」は、年に3回実施されていますが、まだ、認知症の人に参加いただいたことはないそう。「ハンドセラピーなどゆったりと過ごせる場の提供もしてきましたが、ご本人は施設に通っていて時間が合わなかったり、その家族さんも、通所の間に用事を済ませたかったりで、なかなか参加が難しいのかもしれません」と勝村職員。
認知症の人やその家族など孤立しがちな人が、地域で気軽に集える場をどのようにつくっていくかが課題となっています。
◆どなたでもお越しください
市内8カ所認知症カフェ
名称(開催場所):
◇みかんの木(名張市民センター)
◇かかしカフェ(長坂のKAKASHI/赤目町長坂)
◇オレンジ・カフェ(蔵持市民センター)
◇めろんカフェ(美旗市民センター)
◇オレンジ・モア(つつじが丘市民センター)
◇せいりゅうカフェ(国津まちの保健室)
◇39カフェ(ふれあいサロン「ゆこゆこ」/百合が丘西3)
◇メロディカフェ(サロン「きずな」/すずらん台東3)
詳しくは市HPか、各地区まちの保健室へ
■いつものお店で寛(くつろ)いで
◇喫茶店が認知症カフェに
「私の地域でも、認知症の人が徐々に増えていくのを目の当たりにしてきました」と話すのは、喫茶店店主の森本祐子さん。民生委員児童委員などの経験もあり、福祉に関する研修も数多く受講してきました。
そんな森本さんは、認知症への理解を広げようと、2年前に認知症カフェ「かかしカフェ」を立ち上げました。「認知症は特別な病気ではないし、状態もさまざま。ここに来てくれる認知症の人と面識を持つことで、みんなで支え合えるようになるといいですよね」とニコリ。
◇多様な人が集える居場所
9月に「手話で歌おう」をテーマに開催された「かかしカフェ」には、市内外から10人以上が集まりました。「森本さんの人柄に惹ひかれて集まってくるんですよね」と口を揃えます。森本さんを介して、初対面の人同士も打ち解けていきました。
「よく来てくれる認知症の人も何人かいましたが、施設に入所したりして来れなくなることも…。認知症のある人もない人も、障害のある人もない人も、子どももお年寄りも、誰もが集い、つながり、憩える居場所を築いておきたい」と森本さん。
普段から気軽に立ち寄れて、自分を受け入れてくれる人たちがいる――。「かかしカフェ」は、支援する側、される側という立場も無く、誰にとっても安心できる居場所となっています。
◆皆さんと連携して、地域に居場所をつくっていきたい
私たちの暮らしは、周りの人との関わり合いで成り立っていますが、人とのコミュニケーションを避けていったり、社会との関わりが減っていったりすると、認知機能の低下をもたらします。「難聴」が認知症の原因の一つとされているのも、周囲からの情報量が減少するためです。
認知症の人が安心してコミュニケーションをとれる居場所、ご本人が活躍いただける居場所があれば、社会とのつながりを保っていけます。しかし、身近な地域で、気心知れた人たちが集うお店などは減っているように思えます。
皆さんのお店や事業所などで、認知症の人など様々な人が集える居場所をつくっていきたいとお考えの場合は、地域包括支援センター(【電話】63-7833)へご連絡ください。できるところから、一緒に取り組んでいきませんか。
▽地域包括支援センター
森田有希
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