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自治体の皆さまへ

特集 認知症とともに。自分らしく輝くために

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三重県名張市

認知症とともに、よりよく生きられる社会を目指し、新たな取組を実践されているお二人に話を伺いました。

■安心して認知症になれるまちは誰にとっても暮らしやすい
▽はしもと総合診療クリニック リンクワーカー
水谷祐哉さん(理学療法士)
診療所などの患者を、地域の支援や活動につなげる「リンクワーカー」として活躍。「図書館で健康づくりプロジェクト」や「コミュニティガーデン」などを実践する「ちぃちかけん(地域に力と健康を)」活動の事務局長として、地域につながりや居場所を生んでいます。

◇認知症の人にも聞いてみよう
病院に行くほどではないけれど、健康や介護、そして、認知症のことなど、普段から気になっていることはありますか。そんなとき、気軽に打ち明けられる場所があるといいですよね。
私は、医療専門職を中心とした「ちぃちかけん(地域に力と健康を)」活動のメンバーとして、毎月第2火曜日に、図書館で健康相談を実施。まちの保健室と連携し、「本を借りに来られたついで」に、いろんなお話を聴かせていただいています。
こうした場も含め、地域で認知症の人が出かけられる場について考えるとき、認知症の人が「行きたいな」と思えるかどうかが重要です。例えば、注文や支払いなどに配慮が行き届いていて、「認知症の人も、ぜひお越しください」と明示されていると、行ってみたくなるのではないでしょうか。本人の意欲や能力を引き出せる場だとなおいいですよね。いずれにしても、認知症の人と一緒に考えてみるといい。聞いても分からないだろうと思われがちですが、そんなことはありません。

◇多業種で連携できるといい
私は、「認知症カフェ」で講師をさせていただくこともありますが、「認知症になりたくないから学びに来た」という人もおられます。もちろん、予防は大切ですが、認知症と向き合うことを避けてしまわずに、「大切な人が認知症になっても、よりよい関係を保つためには」「自分が認知症になっても、安心して暮らせるまちを築くには」といったことを、ぜひ考えていただきたいと思います。
認知症は、認知機能が低下し、「暮らしに支障が出ている状態」を指します。だったら、支障をきたす社会の方を変えていけばいいと思いませんか。ゆっくり支払いができる「スローレジ」など、認知症の人にやさしい取組が、まちのあちこちで求められます。
そのためにも、飲食店や宅配業者、金融機関など、認知症の人に関わるであろう地域のさまざまな職種の人が交われる場があるといいかもしれない。「そこではそんな対応をしているんだ」「だったら一緒にこういうことができませんか」といった情報交換ができると思います。
安心して認知症になれるまちを目指して、私たちの活動も多様な業種の皆さんと連携して取り組んでいきたいですね。こうした取組は、結果として、誰にとっても暮らしやすいまちにつながっていくはずです。

■本人の持ち味や小さな幸せに光を当てていきませんか――
▽慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科
堀田聰子(さとこ)教授(認知症未来共創ハブ代表)
仲間たちと「認知症未来共創ハブ」を立ち上げ、認知症のある人の想いや体験、知恵を起点に本人とさまざまな関係者とともに安心して認知症になれる未来を探索。市内でも12人の認知症のある人の小さな幸せに耳を傾け、専門職や住民向けに「マイクロハピネス」研修を展開。

◇幸せを感じる秘けつ
ひと足先に認知症とともに生きる先輩たちの想いや体験、知恵に耳を傾け、認知症の本人とともに暮らしやすい地域づくりに取り組んでいます。全国各地で認知症のある人の生活の場を訪ね、お話をお聴きしていると、幸せを感じる秘けつのようなものが浮かび上がってきました。
道に迷うこともあるという人は「散歩のときは犬と一緒。犬が連れて帰ってくれるからね」。名前と顔が一致しなくなってきた人は「人に会ったら、とりあえず『こんにちは』と言っておく」。苦手になってきたことを自覚して、ときに「まぁいいか」と折り合いをつけ、独自の知恵や工夫を編み出しています。
「化粧をすると元気になる」という人は、「私が元気になると、家族も喜んでくれるでしょ」と微笑みます。誰かと笑い合えることは、日々の幸せの源です。
やってみたいことを諦めずに口に出してみることも大切。なかには、「小料理屋をやりたい」と、地域の子ども食堂で料理をふるまうようになった人もいます。周りの人も一緒に挑戦することで、新たなつながりや仲間が生まれています。

◇新しい健康の概念
オランダ発の新しい健康の概念「ポジティヴヘルス」では、社会的・身体的・感情的な問題に直面したときに適応し、本人主導で管理する「能力」を健康と捉えています。生きていればいろいろな困難があるもの。医学的には「病気」だとしても、必要な助けを得て、前向きに歩んでいける力があれば「健康」というわけです。
認知症に限らず、老化に伴って、いずれいろいろなことができなくなっていきます。これまでの考え方ややり方から自由に。ちょっとした楽しみや喜び、こだわりを大事に、周りの人と対話しながら一緒に望みを形にしていく。そうすることで、健康でいつづけることができるのではないでしょうか。
名張では、「なんとかなるなる。なばりです。」というブランドロゴが示すように、地域まるごと支え合いの風土が培われてきています。困りごとや課題ではなく、本人の持ち味や小さな幸せに光を当てると、願いを叶え合う応援団の輪が広がっていきます。だいたいオッケー、と思える。誰かの幸せが、みんなの幸せにつながる。一人ひとりのつぶやきから、暮らしやすいまちづくりへ。名張だからこそ、そんな取組を着実に進めていけると期待しています。

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