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自治体の皆さまへ

なばり流まちづくりの行方(1)

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三重県名張市

地域づくりのあり方について考える「コミュニティ政策学会」が7月6日・7日に、adsホールと名張市民センターで開催され、のべ約400人が参加。全国から有識者や地域の実践者が名張に集い、議論を交わしました。
名張市では、地域予算制度(使い道が自由な地域への交付金)を活用した住民主体のまちづくりを平成15年度にスタート。制度の改訂・更新を図りながら進化させ、20年間にわたり15地域において先進的な取組が多数生まれています。一方、地域の担い手の高齢化や人口減少が進む中、従来のやり方では活動を維持することが難しくなっているのも実情です。
今号は、コミュニティ政策学会の冒頭に開催されたシンポジウム「人口減少下における持続可能なコミュニティ政策のあり方」において、名張の事例を踏まえながら話し合われた要旨をご紹介します。


昭和45年以降急増していた名張市の人口は、2000(平成12)年をピークに縮小。地域においては活動の中心を担っていた団塊世代の高齢化に伴い、担い手不足が顕著化していきます。

■住民自治と団体自治の両輪を意識して
中川幾郎さん(帝塚山大学名誉教授)
名張は、自主・自立の地域づくりのトップランナーとして、全国のモデルとなってきました。そして今、団塊世代の転入で人口が急増したまちが高齢社会に突入。ちょうど曲がり角に差し掛かっています。
こうした中、「住民自治」と「団体自治」という地方自治の両輪を改めて意識する必要があります。福祉・防災など住民自治がしっかりするほど、行政すなわち団体自治は業務の効率化を図れますし、より高度な対応に特化していくことができます。
もちろん、地域づくり組織は決して行政の下請けではありません。住民自治を実践する場であり、権利です。権利と裏腹に義務も含んでいるわけですが、行政と住民の双方がその認識を深める必要があります

■人口が減少し、負担を分担する時代に
岩崎恭典さん(四日市大学名誉教授)
名張は合併の住民投票で単独市を選択。その後、どんどん市の仕事が地域へ移っていきますが、「私たちが単独市を選択したから」という意識で取り組まれていったように感じます。
人口減少時代において、企業は労働力の確保に向かい、地域のために活動する人はますます少なくなっていきます。無償ボランティアでは難しいので、地域でビジネスを起こせる体制が求められますし、地域のいろんな団体や活動を横断的に組み合わせる手法も必要とされます。
負担を分担する時代とも言え、地域を構成する人や団体が「当事者」であることを意識できるかが重要なカギ。子どもや孫のために何ができるか。地域が未来をあきらめず取り組んでいく必要があります。

■行政と地域の役割分担を考えて
名和田是彦さん(コミュニティ政策学会会長/法政大学教授)
全国的にみて名張市は都市内分権が進んでいます。例えば、市民センターを地域づくりの拠点とすることは重要なことですが、その実現に苦労している自治体も多いのが実情です。
一方で、名張市からの交付金を基に住民がボランティアで取り組んでいるのが現状で、有償ボランティアの仕組みなど一工夫必要かと思われます。また、地域づくり組織の規模感で活動が進むと、多くの住民はその活動をお任せしてしまう傾向にあり、より身近な地域での活動も大切にすることが重要です。
行政は、どこまで地域に任せていくのかを確定していかないと、地域が頑張るほどに、ずるずるとその役割が増えていく。行政・地域の役割分担を考えていくことが求められます。

■若い世代の思いを大切にしていきたい
名張市長 北川裕之
平成12年をピークに名張の人口は減少に転じ、大きな転換期を迎えたのは、亀井前市長が就任された20年ほど前。財政の厳しさが表面化しました。
その主な要因として、爆発的な人口増に伴い都市環境整備を進めてきた結果、借金が膨らんでいったことが挙げられます。そして、平成の大合併で、住民投票により単独市を選択。合併特例債などの財源確保ができず、国の交付金なども十分でなくなるといったことが財政難に拍車をかけていきました。
そうした中、名張市は、地域に一定の予算を配分して必要な課題解決に使っていただく都市内分権を推進。財政難というピンチをチャンスに変えた大きな出来事だったと言えます。
私は、2年前に市長に就任。
総合計画に「シティプロモーション」の考え方を取り入れ、たくさんの人に名張を好きになってもらうことで、まちを活気づける取組を進めています。この一環でブランドロゴ(なんとかなるなる。なばりです。)も若い世代の皆さんと作りました。
ロゴに込められているのは、「不安や悩みがあっても、名張の人はつながりが強く温かく助けてくれる、そんな中から夢や希望を叶えていける。それが名張の魅力だ――」という思い。この20年間のまちづくりの結晶が若い世代に浸透していたのでしょう。そして、この若者たちが20年、30年先の名張を背負っていくのだと心強く感じます。こうした若い人たちの思いを大切に、足腰の強い地域づくりを進めていきたいと思います。

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