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自治体の皆さまへ

守り、活(い)かし、次代へ 私たちのまちの文化財(3)

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三重県四日市市

■文化財の保存・活用のための方策
文化財の保存・活用を進めるための方策として、(1)知る、(2)守る、(3)活動を育む、(4)未来への継承、の4つを定め、文化財を地域の宝として守ることに加え、多様な活動を育むことで活用し、未来へ継承していきます。

●市民の一人として文化財を考える
地域計画の策定協議会に、専門家ではない市民として参加させていただきました。「文化財って何?」というところからでしたが、このまちで育ち、住む者として、意見を言うことができればと思いました。協議に参加することで、新型コロナによるイベント空白期や担い手不足などの問題から、文化財を守り伝えていくことの難しさを感じました。
私自身は、子どもの頃から文化財だと意識することもなくお祭りのたびに大入道を見てきました。大入道は子ども心には少し怖かったですが、楽しかったお祭りの記憶に結び付いています。他にも、我が家の食器の多くを購入してきたばんこ祭りなど、地域の行事は育ったまちの思い出を形作っています。今、いろいろなものが全国的に標準化していって、どこに行っても同じような街並み、同じようなお祭りを目にすることが多い気がします。ここでなければ見られないという、育った場所の思い出は、子どもたちにとっての根っこになると思います。だからこそ地域の文化財を大切に引き継いでいきたいですね。

地域計画策定協議会 委員 中森ゆき子さん

■もっと文化財を身近に!各種イベントに参加してみませんか
▽久留倍官衙遺跡まつり
日時:11月11日(土)9:00から
※雨天時は11月12日(日)
場所:久留倍官衙遺跡公園
定員:150人程度
料金:無料

▽第12回 郷土が誇る芸能大会
日時:11月19日(日)13:00から
場所:文化会館第2ホール
料金:無料

▽四日市市文化財保存活用地域計画シンポジウム
日時:12月17日(日)13:30から
場所:総合会館8階 視聴覚室
定員:120人
料金:無料

■文化財を保存し活用する意義について、話し合っていただきました
地域計画策定協議会 会長 四日市大学副学長 鬼頭浩文さん
同大学総合政策学部特任准教授 浅井雅(みやび)さん
同大学総合政策学部特任准教授 倉田英司さん

鬼頭:保存維持にかかる経費を考えると、地域のお宝をすべて指定文化財にすることはできません。指定や登録の対象にはならないけれども、地域にとって大切なものを有効活用する形を取りながら保存する計画を作る、それが地域計画です。例えば歴史的価値のある倉庫街に店舗を入れて集客すれば、文化財を活用できているということになります。あるいはそこまでビジネス化しなくても、旧四郷村役場でセミナーや演奏会を開催するなど、文化財を活用すれば、財政的支出をする理由になるでしょう。
倉田:活用の例で言うと、亀山市の関宿は住民の意識の変化の点で興味深い例だと思います。旧東海道の町並みを残す関宿は、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されていますが、当初は住民の中に消極的な意見もあったそうです。町並みを維持していくために、生活面に制限が生じることや、観光地化してしまうことへの懸念から生まれた意見です。でも、この10年、20年で住民の意識が変わってきたように感じます。まちの文化財に対する市民意識が熟成し、みんなの重要な資源なのだと認識されるようになったと思います。
浅井:私は子どもたちが文化財に触れる機会を作ることが大切だと思っています。今の子どもたちは、核家族化や伝統行事の減少で古いものに触れる機会や、年配の人と関わる機会が少なくなっています。子どもの頃は、文化的価値の意味を知らなくても、身近にあって、触れることができればいいのです。継承に携わる機会がないと、文化財が自分とは関係ないものになってしまう。文化財に目を向けずに子どもたちが育ってしまう社会、それを憂慮しています。
倉田:子どもたちが参加して、文化財を継承するきっかけを作ることが大切ですよね。
鬼頭:文化財とコミュニティの関連を示す例では、東日本大震災の後、東北地方では祭りで住民がつながっている地域ほど、復興が早かったという事例がありました。震災後、がれきの下から掘り起こされた獅子頭を用いて獅子舞を復活させるなど、文化財は復興のシンボルになったのです。
浅井:コミュニティの再生にとって文化財は重要だという事例ですね。
鬼頭:地域に根付いた祭りは、大人になって地元を出た人も、祭りの時期には帰ってきて祭りに参加するということがあります。そして戻ってくると、「どこどこの息子さん」ということを近所の人が知っている。そういう地域のつながりは、祭りという文化財が継承されているからこそ生まれるものです。
浅井:自分と社会のつながりの最小の単位は地域コミュニティです。成人したらその外に出ていくとしても、子どもの時に地域コミュニティに属した経験があれば、どこに行っても、自分の地域における役割を理解できると思います。身近な文化財は人や社会とのつながりを学ぶきっかけになる。それは、目には見えない文化財の活用の形なのではないでしょうか。

この特集についてのお問い合わせ・ご意見は:文化課
【電話】354-8238【FAX】354-4873

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