■ニセカンランハギ
ニセカンランハギはニザダイ科クロハギ属の魚で、インド・西太平洋に広く分布しています。当地で「三の字」と呼ばれるニザダイの仲間で、尻尾の付け根にある水平方向に出ている白い棘(とげ)が特徴です。雑食性で、岩の表面を削り取るようにして藻類を食べるほか、甲殻類などをエサにしています。
南方系の魚で、日本では黒潮の影響を強く受ける本州太平洋側の関東以南が主な分布域と推測されますが、近年分布が広がっているようです。令和5年は黒潮由来の海水が東北の太平洋沿岸まで強く波及したこともあり、令和5年10月から令和6年2月にかけて行われた宮城県の定置網の漁獲物調査では、ニセカンランハギを含む27種の南方系魚類の出現が初めて記録されています。
当地においても南方系の魚類は増加傾向にあり、特に黒潮大蛇行(くろしおだいだこう)が始まった平成29年以降で、その傾向は顕著です。市の水産農林課が行っている潜水調査においても、ニセカンランハギを含む南方系魚類がかなり増えていると感じます。漁業においては、定置網や刺し網で漁獲される機会が増えているのではないかと推測されます。
私が今から20数年前の学生時代、志摩から潮岬まで、熊野灘のいろいろな磯へ釣りに通いましたが、ニセカンランハギは潮岬でしかお目にかかれない魚だと思っていました。今は尾鷲でも普通に釣れることがあるのではないでしょうか。尻尾の付け根の棘が鋭くて危険なので、釣れた際には要注意です。
ニザダイの仲間なので、引き締まった白身で、脂も乗って身質は良さそうです。ただし、これもまたニザダイの仲間の特徴で、季節や個体差によって、身に独特の匂いがあるものがいるようです。私は、ニザダイは食べたことがあるのですが、ニセカンランハギは食べたことがなく、機会があれば試してみたいと思っています。
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