■キビナゴ
キビナゴはニシン目ニシン科に属するイワシの仲間で、熱帯海域を中心に西部太平洋から西武インド洋の温帯まで広く分布しています。日本では、太平洋側の房総半島以南、日本海側の山陰以西に分布します。
分布の中心である熱帯海域では、周年産卵し、メスの成熟体長が約4cm、最大体長は6~7cm、寿命は数カ月~半年であるのに対し、日本沿岸では春から秋にかけて産卵し、メスの成熟体長が約6cm、最大体長は10cm、寿命は半年~約1年です。主に動物プランクトンを食べて成長し、水温が20℃前後になると産卵が開始され、水深20mよりも浅い砂地で産卵を行います。
和歌山県の調査によると、前の年に生まれた大型の魚が春から夏まで産卵を行い、夏以降は、その年の春に生まれた魚の一部が小規模に産卵すると報告されています。西日本各地で報告されているように、夏を境に漁獲されるキビナゴの大きさが大型から小型に交代するのは、春から夏の産卵群と夏以降の産卵群の交代によるものと考えられています。
他のイワシ同様、肉食魚や海鳥の格好の餌食(えじき)となるため、群れを作って回遊します。海中で泳ぐ姿は側面にある幅広い銀色の帯がキラキラと反射してとてもきれいなのですが、見る角度が変わると急にどこにいるのか分からなくなるくらい水の色に溶け込んでしまうから不思議です。こうして捕食者の目を欺(あざむ)いているのかもしれません。
当地では、定置網で漁獲された新鮮なものが流通しています。料理法は刺身、天ぷら、唐揚げ、煮付け、干物等、バリエーション豊富です。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>