■ミズクラゲ
ミズクラゲは世界の温帯域、熱帯域に分布する、日本近海で最も一般的なクラゲです。クラゲと呼ばれる生物には、触手(しょくしゅ)という糸状の部分にある毒で、獲物をしびれさせてとらえるタイプと、毒を持たないタイプがあります。前者は刺胞(しほう)動物、後者は有櫛(ゆうせつ)動物という、全く異なるグループになります。刺胞とは毒針が入った袋のことで、何らかの刺激を受けると、袋から毒針がはじき出される仕組みになっています。このような刺胞を持つ生物を刺胞動物といい、クラゲのほかにイソギンチャクやサンゴも含まれます。
ミズクラゲは刺胞動物ですが、毒性が弱く、触手が短いので、手で触っても全く痛みを感じないことがほとんどです。ただし、皮膚の薄いところや、肌の弱い人、子どもは注意が必要です。
ミズクラゲの繁殖は、オスが精子を海中に放ち、精子を体内に取り込んで、受精したメスが卵を産みます。受精卵は孵化して0.1mmほどの楕円形のプラヌラと呼ばれる幼生になります。プラヌラは体表の短い毛を使って海中を泳ぎ、岩場などに付着し、触手が生えて、ポリプと呼ばれるイソギンチャクのような形になります。ポリプはオス、メスの区別がなく、1~2mmほどに成長し、分裂してクローンを増やします。冬に水温が下がると、赤色で、数枚の皿が重なった形になります。やがて、皿が一枚ずつ分離してコスモスの花のような形となって海中を泳ぎ始めます。このころの呼び名はエフィラといいます。環境によっては、ポリプの期間がなく、プラヌラからエフィラに成長することもあります。エフィラが成長し、クラゲの形になっていきます。
クラゲの成体はオスとメスが分かれています。ミズクラゲの中央の4つの輪が生殖腺で、成熟するとメスはオレンジ色、オスは淡紫色になります。また、4つの輪の内側が胃になっていて、小型個体はヒドロクラゲ、大型個体は甲殻類などの動物プランクトンを食べます。大きいものでは、傘の直径は最大30cmほどに成長します。クラゲの形の寿命は約1年ですが、ポリプは何年も生き続けるようで、寿命はよくわかっていません。
ミズクラゲなどクラゲの仲間はしばしば大量発生し、人間にとっては迷惑な生物になります。定置網にたくさんのミズクラゲが入ると、クラゲの引き上げや、選別作業の負担の増加、魚の鮮度低下が懸念されるだけでなく、網に重さがかかり、最悪の場合、網が破れるなどの被害につながることがあります。また、発電所の冷却装置への海水の取水口に詰まるなどの影響があります。
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