■木々と歩む時間―年輪が結びつける家族の絆
飯田林業株式会社
飯田雄亮(ゆうすけ)さん(田間)
小さい頃から家業の林業を間近で見ながら育った飯田さん。社会に出て一度は別業界に就職するも、実家の“林業に携わりたい”という思いから23歳の時、家業を継ぐことを決意。
今では、会社の窓口から現場作業まで幅広い業務を行っています。
○年輪を見て感じる時の重み
祖父・辰雄(たつお)が飯田林業を立ち上げてから70年近くが経ちました。父・隆治(たかはる)も現役で林業に取り組んでいますが、私も3代目としてこの家業を継いでいます。この長い時の流れを振り返ると、会社と木の歩みはどこか似ていると感じるのです。一本の木が大きく育つには、私たちが思うよりも長い年月がかかります。春の芽吹き、夏の成長、冬の厳しさを何度も繰り返し、年輪として刻まれた模様は、その木が経験してきた年月の記録です。同じように、会社も祖父の代からさまざまな時代の流れや困難、そして成長を経験しながらここまできました。木の年輪を見ると、豊かな年もあれば厳しい年もあります。それでも、長い時間の中で確実に時を刻んでいくことは、私たちも同じです。林業も同じく、一朝一夕には成り立たず、長い目で未来を育てる仕事です。祖父の代から父へ、そして私へとつながれてきたこの仕事を通して、受け継がれてきた重みを日々感じています。私を含め、飯田家には兄と弟の3人の男兄弟がいます。巡り合わせもありますが、3人とも地元に残り、家業で働いています。ただ、みんな“会社を継いでくれ”と父には一度も言われたことがありません。それでも私たちがこの道を選んだのは、林業という仕事に惹(ひ)かれ、木と共に歩む暮らしの魅力に引き寄せられたからだと思います。林業が私たち家族を結びつけ、つないでくれたと感じています。
○自然と共に生きる心
木は、長い年月をかけて育まれてきた命そのものです。成熟するには何十年、時には百年を超える時間が必要です。私たちが木を伐採する際には、「その命に対して敬意を持って向き合うことが大切」だと、父から教わりました。飯田家では、木々に感謝し、供養するため、神棚に木の供養塔を設置しています。木を伐採するたびに、その木々の魂や命に感謝の気持ちを伝える場所です。自然と共に生きる仕事をしている私たちは、自然の循環の中でどれだけ多くのものに助けられているかを常に意識しなければなりません。木を供養することは、自然からの恵みを受け取るだけでなく、その恩返しの気持ちを持ち続けるための大切な行動だと思っています。
■飯田家でみる木の植栽(しょくさい)から伐採(ばっさい)まで(60年木)
林業は世代を越えて受け継がれるものです。ここでは、飯田家の取り組みを通じて、樹齢60年の木を伐採(主伐)するまでの工程を、植栽から順に紹介します。
※各工程の時期は、気象条件や立地条件によって異なる場合があります。
○植栽(しょくさい)(樹齢0年)
苗畑で育てられた苗木を、1本ずつ植えていきます。一般的にhaあたり3,000本ほど植えます。
祖父 辰雄さん
○主伐(しゅばつ)・集材(しゅうざい)・搬出(はんしゅつ)(樹齢60年)
成熟された木を伐採し、山から丸太を集めて運び出します。
雄亮さん
○間伐(かんばつ)(樹齢20年~50年)
木が大きくなると、込み合ってくるため、立木を間引く伐採を行い、成長を促します。約20年ごとに2回程度行います。
父 隆治さん
○除伐(じょばつ)(樹齢10年~20年)
生育の悪い木や他の木の生育を妨げる木を切って除去します。
父 隆治さん
○枝打(えだう)ち(樹齢10年~20年)
節のない木材を作るために枝を切ります。約5年ごとに3回程度行います。
父 隆治さん
○下刈(したが)り(樹齢0~5年)
植えてから数年は、草の成長に負けてしまうため、木の成長が阻害されないように雑草を刈りはらいます。
父 隆治さん
<この記事についてアンケートにご協力ください。>