■持続可能なまちづくりに向けた林業の重要性
役場産業振興課農林係 弓場主事
◆森林保全には林業従事者の協力が欠かせない
皆さんも山から響き渡るチェーンソーの音を耳にしたことがあるかもしれません。それは単なる木材生産のためではなく、森林の整備を通じて水資源の確保や災害に強いまちづくりを目指すなど、さまざまな目的で行われています。
町では、代表的に2つの税に関わる事業を実施しており、これには林業従事者の協力が欠かせません。
◆森林環境譲与税
○林業経営に適さない森林の公的整備
伐採木の搬出が難しい場所などでは、経済的価値が生みにくく、手つかずになることがあります。そこで、所有者に対する意向調査や境界確定をし、その後、町と森林所有者、林業事業体が協定を結び、公的な森林整備を行い、森林の健康を保ち、生態系を守っています。
町では令和5年度までに28.95haの間伐を実施しています。
◆みえ森と緑の県民税
(1)災害からライフラインを守る事前伐採
度会町と中部電力と三重県が連携し、災害時に停電が発生し、電線が寸断されることを未然に防止するため、倒木の恐れのある立木の事前伐採を実施しています。
(2)特定水源林の整備
地域の飲み水に関わる重要な森林である特定水源林の間伐を行い、日光や水分が行き渡りやすくすることで、土壌の健康を保っています。
○令和6年度 同事業実施予定一覧
・森林環境教育推進事業
・流倒木伐採事業
・木材とふれあう場づくり推進事業
◆町職員に聞いた山のQandA
Q1 山の寄付は受け付けていますか?
A1 受け付けていません。ただし、上記の事業のように森林整備の手助けを行っています。
Q2 森林の公的整備はどのように実施していますか?
A2 町が順次、所有者への意向調査から実施しています。対象となった際には、ぜひご協力をお願いします。
Q3 自らチェーンソーを使って木を切ってもいいのですか?
A3 チェーンソーを使用した伐採は、非常に危険です。安全に使用するため正しい知識を身に付けた上で伐採を行ってください。また、伐採する場合は町に伐採届を提出する必要があります。
※一定の条件を除く
■未来へつなげていくことに価値がある
いせしま森林組合 玉串憲一(けんいち)組合長(川上)
○変わりゆく時代に対応する
現代は、昭和の時代に比べて原木価格が約3分の1にまで下がり、林業に適した時代とは言えません。しかし、林業は木材生産だけには留まりません。適切な森林整備を行うことで、山の機能を発揮させ、土砂崩れや洪水などの災害を防ぐことにもつながります。これは、単なる製材目的だけが林業ではないという点で重要です。
また、「森林環境譲与税」や「みえ森と緑の県民税」に関連する新たな施策が登場し、所有者に負担をかけずに森林整備を行う動きも進んでいます。これらの施策は、持続可能な森林管理を促進するための大きなチャンスです。
さらに、伐採木のバイオマス利用や、木材をそのまま使わない集成材や合板材など、従来とは異なるより多様で有効な活用方法があります。これらにより、資源の無駄を減らし、環境にも配慮した利用が可能になってきています。
私たちが目指すべきは、これらの新しい可能性を活かした持続可能な森林経営です。特に、個人の財産としての山に目を向けることが重要です。所有者の皆さまには、「山で少しでもお金が入る喜び」を感じていただきたいと思っています。それが山への関心につながると考えています。そのためには、「境界を知ること、伝えること」が大切です。たとえ境界が分からなくても、家族が所有する山の存在を知ってもらうことだけでも重要です。一度山に対する関心が薄れてしまうと、再びそのつながりを取り戻すことは難しくなります。今、その取り組みをすることには必ず価値があるのです。未来にはどのような事業や風の吹き回しが訪れるかは分かりませんが、私たちが今から行動を起こすことで、その未来を切り開くことができると信じています。
私たち森林組合も一緒に、この素晴らしい自然を守り、次の世代へとつなげていくために、日々取り組んでいきます。
○森と触れあう子どもたち
町内の保育所から高校までの子どもたちは、みえの森と緑の県民税などを活用した授業を通じて、森林について学んでいます。
人と自然
それはいつまでも共存するもの
途切れてはならない大切な縁(えん)
問合先:役場産業振興課
【電話】62-2416
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