■先端技術を活用して農業の課題を解消
農業が抱えるさまざまな課題の解決策として期待されているのが「スマート農業」です。スマート農業とは、ICT(情報通信技術)やロボットなどの先端技術を活用し、超省力化や高品質生産などを実現する、新たな農業です。
ロボット・AI(人工知能)・IoT※4などの情報通信技術を活用した「スマート農業技術」を搭載した機械やシステムの開発が進み、これらを導入することで、農作業の効率化や身体の負担軽減、農業の経営管理の合理化ができ、農業の生産性を飛躍的に向上することができます。
また、熟練の農業者が培ってきた経験やノウハウの継承も、データ化することでスムーズに行うことができ、新規農業者の参入がしやすくなることも期待されています。
町内農業者でも、少しずつスマート農業技術の導入が進んでいます。
※4 Internet of Thingsの略で、「モノ」をインターネットにつなげることで、相互に情報をやり取りする仕組みのこと
■町で活躍するスマート農業技術
○自動操舵システム(自動運転)トラクタ
自動操舵システムを導入したトラクタは、ハンドルを握る時間が減るため、身体の負担軽減につながります。広い田畑の直線操作の無駄がなくなり、重複幅も減少することで作業効率が向上します。
特に、農作業の経験が浅い人でも熟練者と同等以上の精度・速度で作業ができるため、農作業のハードルが下がり、人手不足解消が期待できます。
○ドローンで肥料などの散布や生育の監視
肥料や消毒の散布は、手作業やトラクタで行っていますが、近年農業用ドローンが登場しました。離陸・散布を自動で行い、特別な操作スキルは不要なため、誰でも毎回、同じ精度で作業ができます。
作業時間の短縮が特に大きく、従来の4分の1程度の時間で作業が完了します。散布ムラや重複を防ぐこともできるため、農薬・肥料コストの削減や環境負荷の軽減にもつながっています。
○スマート農業を取り入れた農業者さん
株式会社斉藤來洲 取締役 齋藤啓太さん
自動操舵やドローンを導入したことで、身体の疲労軽減と作業効率が上がったことが特に良かったです。1つ1つの作業時間が短縮されることで、他の作業ができ、今ではこれらを使わない作業は考えられません。
■役割は「食」だけではない「多面的機能」を持つ農業
農業が支えるのは「食」だけではありません。あまり知られていませんが実は「治水」の面でも、大きな役割を果たしています。
日本は世界でも有数の雨が多い国です。最近では、ゲリラ豪雨や線状降水帯による大雨などが原因の災害が増えています。
その中で、雨を溜める機能として大きな役割を果たしているのが水田です。水田は溜池などと同じように降った雨水を一時的に溜め、川への急激な流れ込みを防ぐ働きをしています。
また、継続的に手入れされた田畑は多くの生物のすみかとなり、多様な生物の保全にも大きな役割を果たしています。そして、水田の水面に映る青い空や夕日、そよぐ風に揺れる稲穂やその周辺の水辺が一体となった美しい景色など、日本の昔ながらの景観を保全する役割も持っています。
このような「食」以外に、農業が持つさまざまな役割を「多面的機能」といいます。
■農業の多面的機能を守る地域の力
農地維持を目的として、農地周辺の水路や農道の維持管理をしている多面的機能活動組織が、町には2団体あります。員弁川以北の農地や農業用施設を対象に活動をする「ECO贔屓」と員弁川以南で同様の活動をする「三和集落資源エコ隊」です。この2団体は、地元自治会や農家組合などで構成されています。
主な活動は、水路の泥上げや軽微な修繕、畦や農道などの草刈りです。これらの活動は、農業を正常に維持していくためには不可欠なものです。
例えば、水路の泥上げを行わないと土などが徐々に蓄積し、水田への水の出入りが悪くなります。これは作物を育てる弊害になる上、多面的機能としての治水の役割も十分に果たせなくなります。
畦や農道などの草刈りも同様に、作物を育てる環境を整えるためには必要な作業であり、美しい景観を維持していくためにも重要なことです。
その他にも小学校での農業体験の実施など、精力的に活動を行っていますが、両団体とも担い手の高齢化と減少という課題を抱えています。
■地産地消と地域の協力が町の農業の未来へつながる
農業は「食」以外にも「多面的機能」を持ち、私たちの生活をさまざまな面から支えています。そして、農業者やECO贔屓・三和集落資源エコ隊など、多くの人の手によって成り立っています。
しかし、共通して課題となっているのは、担い手の高齢化や減少です。時代とともに農業を継続することが難しくなっている今、地域の理解と協力が不可欠となっています。普段の生活の中で、農業に携わることがない人たちにもできることがあります。それは地産地消に取り組むことです。東員町の農業が今後も持続していけるよう、一緒に支えていきましょう。
問合せ:産業課
【電話】86-2808
<この記事についてアンケートにご協力ください。>