皆さんは「手話」という言語を知っていますか。そして、その手話を使って生活している人たちがいることを知っていますか。
手話は、主にろう者などの聴覚に障がいのある方が使う「言語」で、指や体の動き、顔の表情などで、気持ちや考えを表現します。生まれつき耳が聞こえない、聞こえにくい人にとって手話は、日本語と同様にコミュニケーション手段のひとつであり、大切な言語です。
今回の特集では、松阪市の手話への取り組みの紹介と、今年4月に施行10周年を迎えた「松阪市手と手でハートをつなぐ手話条例」に込められた想いをインタビューしました。
手話を通じて、ろう者への理解を広げ、誰もが住みやすいまちを実現するために、私たちにできることを考えてみましょう。
■小学校手話学習の様子《鵲小学校4年生の皆さん》
松阪市では、学校における手話学習推進事業を令和5年度から実施しています。今回は、鵲小学校4年生の学習の様子を紹介します。
授業テーマ「聞こえない・聞こえにくい人」について学習しました。
・言葉を伝える方法が5つあることを学びました。
・難しかったけど、手話で話しました。
■5つのコミュニケーション方法
・手話・指文字
手の動きや顔の表情で伝えます。
・口話・読話
話し手の口の動きや形から話の内容を読み取る方法です。
・筆談
紙に書いて伝えます。スマートフォンなどで文字を打って伝える方法もあります。
・ジェスチャー
身振り手振り体を動かし伝えます。
・空書き
空中に指で文字を書いて伝えます。
■講師の声
《“やさしい、あたたかみ”があるまちになっていってほしい。》
こどもたちは、素直で真剣に話を聞いてくれるため、分かりやすく、楽しく教えたいと思い授業をしています。「ありがとう」や「おはよう」など、日常会話の手話を一緒にニコニコ笑顔でしてくれることがとても嬉しいです。小学校の授業でも伝えていますが、私たちろう者は、耳が聞こえません。しかしコミュニケーションをとる方法は、口話や筆談、体で表現などたくさんあります。こどもたちには、あたたかく、やさしい心で成長していってほしいと思いながらいつも授業をしています。これからの松阪市も、あたたかみがあるまちになっていってほしいと思います。
中西久子(なかにしひさこ)さん(松阪市ろうあ福祉協会講師団に所属)
三重県聾学校に34年間勤務。
現在は、小学校や施設で手話の講師として活躍中。
■こどもたちの声
・西浦結斗(にしうらゆいと)さん
もし耳が聞こえない人に会ったら、手話で伝えられるようになりたいと思いました!
・伊藤龍成(いとうりゅうせい)さん
「ありがとう」の手話を学べてよかった。いつも一番使う言葉だから、使っていきたいです!
・松井新(まついあらた)さん
いろんな方法で会話をする方法があることが分かりました。もっと本などで勉強して、実際に会話で使ってみたいです。
■~Interview~手話条例に込めた想い
◎全国4番目となる手話言語条例が成立し、スタートを切りました。
◆私たちにとって、手話は命。
10年前私は、介護ヘルパーの資格を取得するため、施設実習に伺っていました。そこに耳の聞こえない方が入所されていると知り、お話できることを楽しみにしていました。しかし、手話で話しかけても反応がなく、無表情のままでした。もしかしたら手話ができない方かもと思い職員に聞いてみると、入所したころは手話でお話されていましたが、だんだんと無表情になっていったとのことでした。
皆さんは、なぜその方がお話されなくなったかわかりますか?それは、職員の方に手話ができる方がいなかったからです。私たちにとって、手話は命です。話ができなくなるということは、命を奪われるということと同じです。私の両親も耳が聞こえません。将来両親が施設に入って同じような気持ちになることを考えたら、今のこの環境を変えなくてはならない、そして、「聴覚障がい者とはどのようなものなのか、聞こえなくて困ることはどのようなことがあるか、手話とは何か」ということを皆さんに知ってもらいたいなと思い、条例制定に向けたワーキンググループの一員になりました。
◎条例に基づいて設置した手話施策推進会議で取り組みについて話し合っています。
◆10年経った、今。
聞こえる人とのつながりは、以前と比べて距離が近くなったように感じます。例えば以前までは、スーパーで耳が聴こえないことを知ると「ごめんなさい」と避けられることもありましたが、スマホや筆談、身振り手振りで意思を表してくれるようになりました。
また、2年前にアピタで開催した手話普及啓発イベント「まちかどミニお手話べり会」で、すごく嬉しかったことがありました。小学生のお子さんが「夏休みに手話について研究してきたよ」とお話に来てくれ、「手話についてもっと知りたい、手話教室はないですか」と聞いてきました。昔はそのようなことはありませんでしたが、最近はこどもが手話に興味を持ってくれたという話をたくさん聞くようになりました。
手話やろう者について、徐々に知っていただけていると感じますが、心の距離はまだまだあり、壁を感じることがあります。そういった壁をとっぱらって、お互い協力し合い、みんなで楽しんでいければというのが私の最終目標です。
深川誠子(ふかがわせいこ)さん(松阪市手話施策推進会議副会長)
一般財団法人全日本ろうあ連盟理事、一般社団法人三重県聴覚障害者協会会長、松阪市ろうあ福祉協会会長
■PICKUP!松阪市の取り組みを紹介
・企業等手話研修
手話研修を開きたい!
対象:市内企業、事業所など
・出前講座
聴覚障がい者の話を聞きたい!
対象:市民(10人以上)
・手話奉仕員養成講座
手話を学びたい!
対象:手話未経験者
動画で手話を覚えよう!
※QRコードは広報紙P6をご覧ください。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>